せんだい探偵小説お茶会

Sendai Reading-Party of Mystery

40th report

第40回 せんだい探偵小説お茶会主催

エラリー・クイーン「シャム双子の秘密」&北村薫「ニッポン硬貨の謎」

読書会レポート

執筆者:クイーン・ファン

第一幕

せんだい探偵小説お茶会も6年目を迎え、今年もエラリー・クイーン祭りが無事開催されました。ホストのふがいなさで紆余曲折はありましたが、この場をお借りして、ご協力を賜った飯城勇三氏とご参加いただいた皆様に心より御礼申し上げます。

今回企画したのは、「シャム双子の秘密」(角川文庫 エラリー・クイーン著 訳 越前敏弥・北田絵里子)と「ニッポン硬貨の謎」(創元推理文庫 北村薫著)でした。

2冊というボリュームがあっても、14名の方に参加していただきました。(初参加は2名でした。それも関東から!)。

さて、本題に入って。前回の「スペイン岬の秘密」と同様に、エラリー・クイーンファンクラブ以外のミステリランキングに取り上げられたことはありませんが、直木賞作家の北村薫がパスティーシュを作るまでに至った魅力的な作品であることは間違いありません。

1983EQFC(エラリー・クイーンファンクラブ)国名シリーズ+1アンケート5位、1997EQFC全長編アンケート12位、2014EQFC国名シリーズ+2アンケート8位と、「スペイン岬の秘密」よりも、「シャム双子の秘密」は評価が高いと思われる作品であります。

今年も梅雨の時期でありましたが、昨年同様、夏日の暑さで厳しい中、せんだい探偵小説お茶会を迎えることとなりました。

参加者の感想は好意的なものか? それとも不満の声か? ホストとしては、どちらの考えも聞きたい! なぜなら、読者それぞれによる考えがあってこそ、作品のとらえ方が複雑になり、深まっていくと考えているのですから。それでは、はじまり、はじまり・・・・。

第二幕

毎回、クイーン読書会では、作品にちなんだお菓子が出てきます。ホストからは「シャム」ということで、タイのお菓子、エビチップスやマンゴープリン、ドライマンゴー、チョコレート菓子等を。差し入れでは、飴や団子をいただきました。本作品でも探偵が菓子を食べる姿が見られなかったので、ホストの菓子選びは、お茶を濁すようなセレクトになってしまいました。次回の読書会では探偵が菓子を食べている場面に出会えることを祈念したいと思います。

閑話休題。

さて、自己紹介を終えて読書会は本書の内容へと。参加者の「シャム双子の秘密」感想は以下のようなものでした。

「謎解きのために設定されて、謎解きをしたという印象。けっこうあっさり読めた」

「瀕死の〇〇〇に時間をかけて殺害する必要はなかったのではないか。推理も迷走していたためか、クイーン作品好きだと自覚していたのに、その気持ちが揺らぎはじめた…」

「おどろおどろしさがカーを意識しているのかと思った。冒険小説を読み終えたような感動を覚えた」

「好きな要素がてんこ盛りで、おいしい幕の内弁当を食べたような気分。山火事の中で殺人があり、その中でも殺人について考えようとすることに、人間の良心を感じた」

「サルトルの戯曲『アルトナの幽閉者』で『かに、かに、かに』と登場人物が叫んでいる場面を思い出した。推理小説として凄いと感じる部分はなかった。『ギリシャ』での失敗が活かされていないのでは。名探偵らしからぬ行動が多かった」

「火事なのに食べ物やガソリンに対する緊迫感が足りない。警視の罪悪感も足りないのでは。飛行機から助けられないという紙が落とされたのがショックだった。クローズドサークルの原型となった作品であることには感慨を覚えた」

「山火事なのに家に入って安心しているのが不思議。火事を忘れて過ごしているのが信じられない。ヨーデルでしらせあおうとしていたが、私にはできない。やっているところを見たかった」(創元推理文庫 井上勇訳では「ヨーデル」ではなく「大きな声」と訳されていました。越前先生、なぜヨーデルと訳したのでしょうか? お教えいただければ幸甚であります)

「いろいろな要素が盛り込まれすぎていて、山火事のことだけが残ってしまった。召使が車からガソリンを出していて、燃えるだろうと思った。山火事に対する行動が、大丈夫なの?」

「クローズドサークルに目がないので、私のベスト5に入る作品! 法月綸太郎作品に山火事の原因がSF的解釈で書かれていた。4章の引用はミスリードとわかった」

「翻訳ミステリシンジケート内で突っ込みどころの部分を読んでいて、読んでみたら山火事に対する突っ込みどころがたくさんあることが明らかになった。乱歩の『孤島の鬼』を連想した。警視が妻の指輪を盗まれて怒ったところがかわいかった」

「筋書きは評価できるが、エラリーが推理らしい推理はしていなかったのでは。『指輪を盗んだ人が犯人』という場面で真犯人をかばおうとする人がいて出ていったら、その人が犯人になってしまう。つまり、犯人は誰でもいいということになるのではないか。実際、エラリーが、犯人が逃げて行って『そのことは、もう忘れましょう。これからどうするか?』と言った場面が面白く思えた。そして、本当に犯人は誰でもよかったのだなと思った。自白してくれてよかったという終わり方と感じた」

「他の可能性はあり得ないという証明が、ないところに疑問を感じた。指輪を盗んだ犯人が殺人犯で山火事という異常な状況設定も『指輪』を真犯人に取らせて解決を導くことをすくうためだったのではないか。第二の被害者の死は、クイーン親子が責任追及で裁判にかけられるような状況だったのではないか。シャム双子を登場させたのは、トランプのダイイングメッセージのためだけに登場させたように思えた」

推理については、山火事のインパクトを超えられるようなロジックの煌めきが感じられず、ヨーデルと救出されそうで、されない場面での驚愕の方が記憶に残ったという感想が多いようでしたが、本作品の要素から、現代本格ミステリの傑作が生まれたとの感想も多かったように思われます。

第三幕

「シャム双子の秘密」について一度語り終えた時点で、予定時間の半分を過ぎてしまい、「ニッポン硬貨の謎」について感想発表をしていただきました。

「こちらの方が楽しく読めて、面白かった。引用文については成程と思った」

「注釈が多くて、読みづらく、中身があまり入ってこなかった」

「クイーンを読んでいないと楽しめないのでは。探偵小説の中の名探偵とはなんぞや?と考えさせられた」

「世間を騒がせている大事件と名探偵という設定が大好きなので楽しく読めた。後期クイーンを読むともっと楽しめる」

「いつもの北村作品とは違っている。海外から見た日本の書き方がよかった」

「クイーンが大好きで書いたのが、すごく伝わってきた。注釈の多さが訳者の顔が見えすぎる感じがした」

「私が自分の神様に会えるなら、仕事は全部休みます。解決の論理は幻想的すぎるかな」

「北村作品はアンソロジーを好んで読んでいます。海外の人が書いたものを日本人が訳した感じが出ていて大変上手なパスティーシュと思った。英語の俳句は三行詩であればいいので、その辺も上手いと思った」

「注釈からもクイーンに対する情熱を感じた。ベッキーさんシリーズが好きで、その流暢な文章との違いに驚いた」

「注釈には、疲れた。傍に書いてある脚注の方が好き。解決はこじつけ感が強いように思えて、少し理解できなかった。クイーンは好きだけれど、これは…」

「北村作品は結構好きで読んでいる。この作品は、強制的に自分を納得させた」

「『シャム双子』の新解釈が評価された作品だと思う。クイーンの登場人物の書き方の失敗もわかる作品。クイーン生誕100年に合わさった良い企画だったと思う」

「作者が一番楽しんでいる作品だが、それに同調できなかった。『シャム双子の秘密論』での『読者への挑戦』を入れると、それまでに出た解決がすべて偽りであることを宣言する。偽の手掛かりによる推理がたまたま真犯人を当ててしまったから『読者への挑戦』を入れなかったという考えには納得できない。正しい手掛かりと推理による解明がされればよいのだから、その状況が作られた時点で『読者への挑戦』を入れることができたのではないか。『シャム双子の秘密』は論理的な解決とはいえない結末だったから挑戦状は入れられなかったということなのではないか。第四章の引用文があるから『読者への挑戦』を入れなかったという考えにも納得ができない。小説とミステリを対比させているところがあって、北村氏はミステリよりの考えなのはわかるが、ミステリの純粋さを突き詰めたら、ゲームとかパズルでしかないとしたら共感はできない」

作者が楽しんで書いていることと、海外から見た日本の翻訳物として上手く表現されていること、クイーン作品を読み込んでいないと楽しめないのでは、との考えが多かったと思われます。また、『読者への挑戦』と引用文については慧眼なご意見をいただくことができました。

今回の読書会は、この時点で時間がいっぱいとなってしまいました。ホストの時間設定の甘さから「あなたがもっとも好きなキャラクターと場面と台詞は?」を参加者の方からお聞きすることはできませんでした。

ホストは、思いもよらなかった意見や考えを聞くことができ、読書会の良さを、またまた再度実感することができました。

第四幕

今回も参加者の方々にアンケートのご協力を13名の方にいただきました。ご協力ありがとうございました。(それぞれ10点満点です)

プロット サスペンス 解決 文章 論理性 感動・余韻
参加者 6 10 6 9 9 7
参加者 6 8 6 6 7 8
参加者 7 5 4 5 6 5
参加者 5 5 6 8 5 9
参加者 5 5 3 5 5 4
参加者 8 9 8 7 7 10
参加者 7 8 6 6 7 6
参加者 6 7 3 8 6 6
参加者 5 7 5 5 6 5
参加者 7 8 5 7 4 8
参加者 7 8 6 7 6 7
EQⅢ※ 10 9 8 8 9 10
ホスト 10 9 10 8 9 10

※飯城勇三氏のことです。

 

せんだい探偵小説お茶会アンケートの平均点

プロット サスペンス 解決 文章 論理性 感動・余韻
平均点 6.8 7.5 5.8 6.8 6.6 7.3

 

昨年の「スペイン岬の秘密」、せんだい探偵小説お茶会アンケートの平均点

プロット サスペンス 解決 文章 論理性 感動・余韻
平均点 6.4 5.9 7.6 6.3 7.3 6.2

 

「シャム双子の秘密」と「スペイン岬の秘密」の平均点を比較してみると、ほぼ同じぐらいの点数となりました。ただし厳密に計算をしますと(平均点を足して6で割ってみました)、「シャム双子の秘密」の方が少し上になっていました。皆様いろいろとお話をしていましたが、楽しんでくれたのかなとホストは思っております。

読書会終了後には、T氏からの古本プレゼントコーナーが開かれ、参加者全員が鼻息を荒くして参加し、素晴らしい古本をいただくことができました。T氏へ、この場も借りて御礼を申し上げたいと思います。

懇親会へ向かう際には、ホストが山火事の中のエラリーのように迷いながらも会場につくことができました。そこはアローヘッド館ではありませんでしたが、ビールとおいしいおつまみをいただきながら、「シャム」と「ニッポン」やミステリの話題が続き、楽しく時を過ごすことができました。

終幕

ホストのあれこれで語る前に、懇親会でも『読者への挑戦』について話題となりました。ホスト自身も『読者への挑戦』を入れることができたのではないかと考えていたので、「シャム双子の秘密論」以外の理由で入れなかったとしたら、読書会でご意見いただいた、論理的とはいえない解決の仕方だったからではないか、というお考えに傾きかけていました。ですが、なんとなく引っかかっているところがあったので、その後、まず再読してみようと思い、再読してみました。

読書会で、いろいろなご意見をいただきましたが、最後まで楽しく読了することができました。そして、「他の可能性はあり得ないという証明がされていない」というご意見をいただいていましたが、終盤の推理に突っ込みはいれず、山火事に襲われ、パニック状態の状況での推理をつぐむ手順に、またまた感心させられていました。

読了後、『読者への挑戦』が入らなかった理由に、新しい考えが二つ浮かんできました。

まず、一つ目は、ミステリとして反則なのかもしれませんが、探偵の失敗を予感させるため、山火事から助かるけど真犯人を特定できなかった。犯人が指摘できないミステリという、終幕にミスリードするためだったのではないかという考え。

二つ目は、「『読者への挑戦』を入れると、それまでに出た解決がすべて偽りであることを宣言する」と変わらないじゃないかと言われるかもしれませんが、『読者への挑戦』を入れないことで、読者に「これまでに語られた推理や自白の中に真相があるかもしれないよ」と、ヒントのようなものとして、そうしたのではないかという考えです。

もう一つは、読書会前に考えていたことで、最後のホストのつぶやきで、出てきますので、そちらを読んでいただければと思います。

読書会のおかげで、再読して、ここまで考える機会を得たことは幸甚でありました!

参加された方々の正直なお話を聞けて、本当に良かったです!! これだけ語り合えるエラリー・クイーンの作品は、ミステリの特異点だったと、改めて感じることができました。次回のクイーン祭りもお楽しみに!!!

スペシャルボーナス

飯城勇三氏からのアンケート回答

01.「シャム双子の秘密」を読んだ感想

初読時は、やはり、「山火事で全員に――犯人にも探偵にも――死が迫る」という設定に驚いた。

その後、ミステリ部分もよくできているのに気づいた。特に、ダイイング・メッセージを利用して犯人の意外性を高めている点がお見事。このあたりはクイーンFC会誌に書いたが、会員以外は角川文庫の新訳版『シャム双子の秘密』を読んでほしい。

02.「シャム双子の秘密」を以下の点から評価してください。(各項目10点満点。10点の基準はこれまで読んで来たミステリ作品で、10点と思えるものと比較して点数をつけてください。)

プロット=(10)、サスペンス=(9)、解決=(8)、文章=(8)、パズル性(論理性)=(9)、感動・余韻=(10)

03.あなたがもっとも好きなキャラクターと場面と台詞

キャラクター=(双子)。理由=その“けなげさ”に。前年のクイーン作品に登場する子供とはえらい違いだ。

場面=(角川新訳版304p)ページの(父親が死んだと勘違いしたエラリーの反応)。理由(親父が死んだと思った自分が泣いているのに驚くって……)。

台詞=(角川新訳版379p)ページの(「赦しを与えるは――神なり」)。理由(溝掘りで疲れ切ったエラリーが、水を与えてくれた双子に向かって言うセリフ。この時点では、エラリーは双子が殺人犯だと確信している。しかし、双子はもちろん、自分たちが犯人ではないことを知っている。それを頭に入れて読むと、何とも……)。

04.「ニッボン硬貨の謎」を読了後、本書「シャム双子の秘密」についてどう思いますか。

・興味あり

興味深かったので、

(1)EQFCの会誌で特集して、

(2)アメリカのF・M・ネヴィンズとE・D・ホックに「この(北村薫さんの)説をどう思うか?」と聞いてみた。ホックの回答は角川文庫の新訳版『シャム双子の秘密』に再掲。

ホストのあれこれ

01.「シャム双子の秘密」を読んだ感想

○今回の読書会に向けて6回目読了。前回の「スペイン」と同じ旅先の事件ではありますが、物語の起伏(ドラマティックな展開に翻弄されること)を感じるとともに、クローズドサークルで館ものであったため、「黒死館殺人事件」好きの私にとってはたまらない設定でありました。また、国名シリーズの中でも一番サスペンス色が強く感じられた作品であるとも思いました。

クイーンがミステリの先行作品をもとに色々な試みを行い、作品を作り上げていることは、よく語られています。本作品もヴァン・ダインの「カブト虫殺人事件」を意識して作られたのではと「ニッポン硬貨の謎」でも語られていて、私も同じように考えています。本作の魅力は、飯城勇三氏(以後、飯城さんで統一します)の解説で語られる「探偵の推理」と「犯人の計画」によるせめぎあいによって「意外な犯人」が示されることが本作の一番の魅力であることは、まさに、その通りだと思います。そして、「ニッポン硬貨の謎」で語られる「シャム双子論」(読者への挑戦の削除理由と描表具、円環法)も、魅力の骨子であると思います(「ニッポン硬貨の謎」を読むまで、挑戦と描表具に私は気づきませんでした)。ただ、円環法ではなく、「シャム双子の秘密」は、私が考えるミステリのジレンマに対する一つの解答なのではないだろうかと、初読時に漠然と考えていました。

現代ではタブレットが一つの解決方法になると思われますが、30年以上前の初読時には思いもしませんでした。その私の考えるミステリのジレンマとは、「書物という形はミステリにとって、真相は残りのページにあるもの」という考えでした。納得のいく推理や意外な推理が書かれていても、残りのページがまだあることを知ると、「まだ真相ではない」「どんでん返しがあるぞ」「サプライズがあるぞ」と思わされます。「シャム双子の秘密」は、私が考えるミステリのジレンマ、「書物という形はミステリにとって、真相は残りのページにあるもの」を解決する一方法を、新発明した作品であったのではないかと考えています。そして『読者への挑戦』を入れなかった理由の一つは、そのジレンマを解消するため、「もしかして、続きの本がでるかもよ」とミスリードするためだったのかもしれないとも考えられます。(これまでに、他の作品で語られていたら済みません。私の勉強不足です)。

推理については、「ニッポン硬貨の謎」の法月綸太郎氏の解説(P329)で『犯行動機と犯人を限定するための決め手は、あっけに取られるぐらい世俗的なもので、要するに、「地上の論理」と「天上の論理」が、ひとりの犯人の中に平然と同居する不思議な作品なのである。言い換えれば「意外な犯人」という効果に向けられたテクニカルな演出そのものが、「地上の論理」と「天上の論理」の接点になっている(略)』と語られていることは、短い文章ではありますが「シャム双子の秘密」を的確に表した言葉であると私は思います。「スペードの6」「ダイヤのJ」から展開される推理がまさに「地上の論理」と「天上の論理」で、そこに犯人の精神(犯人の計画)がねじれを生み出して、ジレンマを解決しながら意外な犯人を提示していったのだと思います。

「シャム双子の秘密」は国名シリーズの中で、題名とギミック(小道具の一つに「シャム双子」がそのまま出ている)、謎がマッチしている点で、国名シリーズの中でも特異な位置にあると思います。

解説で飯城さんが触れていた、もう一つの「探偵の死」とは、「探偵が死を意識した状況で如何に行動するか」という問いかけと私はとらえました。その回答が、本書のエラリーの姿であったと思います。その気高さは、エラリーが語るP409終わりの3行目からはじまる言葉に感じられました。そして「人間とは何者なのか?」、また考えさせられるものでもありました。

「黒死館殺人事件」(1935)との関連は、飯城さんが解説の中でも触れていました。他にも館に入って不気味な油彩画が飾ってあることや実験室の様子(動物のシャム双子の実験)、障害のある登場人物、探偵の推理の迷走から、小栗がクイーン作品を原書で読んでいた可能性は高かったと考えています(ヴァン・ダインは読んでいたことを作品の中で語ってはいます)。クイーンと小栗には奇妙で暗号のような結びつきがあるように私は妄想しています。ちなみに江戸川乱歩の「孤島の鬼」にもシャム双生児らしき人物が出てきますが、こちらは1925年に発表されています。

02.「ニッポン硬貨の謎」についての感想

読書会に向けて四回目の読了となりました。先にも述べましたが、初読時に「シャム双子論」を読んでシャムの仕掛けを知ることができました。クイーンの凄さと、その意図に気付いた北村薫氏の慧眼に感動しました。ただ、「天上の論理」については、こじつけめいているなと思いつつも、「五十円玉二十枚の謎」の解答の中でもスケールの大きさに作家はこれぐらい考えられる才能がないといけないんだと感心したのを覚えています。今回、再読をしていくうちに、こじつけめいているなと思っていたものが、「いや、これが正解なのでは」と思うようになり、「推理は意外なほど面白い! 思考がジャンプする快感!!」と思うようになっていきました。(小栗虫太郎の名探偵、法水麟太郎の推理は意外過ぎる推理で、天上の論理ととらえることもできます)

オグリものから小栗虫太郎作品について、ミステリが先人から連綿と受け継がれていく様、そして、後期エラリーの経験を、日本で如何に昇華させるかを提示した大団円。これらを愛情あふれる形で発表した本作は、直木賞作家、北村薫氏作品の白眉と言っても過言ではないと思います。

03.ホストの「シャム双子の秘密」の点数。

プロット=(10)、サスペンス=(9)、解決=(10)、文章=(8)、パズル性(論理性)=(9)、感動・余韻=(10)「ミステリで、死を意識する直前をミステリ(謎解き)で救おうとする物語と探偵の姿に」

04.ホストの「ニッポン硬貨の謎」を読了後、「シャム双子の秘密」についてどう思いますか?

もの凄く興味があります!!! 「シャム双子の秘密」に隠された意図を繙くため、そしてエラリーを愛するがゆえに、大団円を迎えさせる長編を書いてしまうなんて! 「愛、愛、愛。それこそが天才の神髄なんだ」とモーツァルトが語った言葉を思い出さずには、いられませんでした(尊貴な学位も想像力も、その両方を足したものを北村薫氏は持っているのだと思いますが、それ以上に愛があったということなのだと思います)

書いた北村薫氏も凄いのですが、それを書かせたクイーンは、もっと凄い!!! 何度も作品の中に出できた『神』!! やはり『神』なのでしょう。

05.あなたがもっとも好きな(印象深い)キャラクターと場面と台詞

キャラ:エラリー

P409終わり3行目からはじまる言葉がなければリチャード父さんでした。

場面=解決編はもちろんなのですが、当たり前な感じがするので、他の場面を述べたいと思います。

P55終わり7行目からP56、4行目の警視の目撃したものの説明をP81からP85で語られる場面。シャム双子を目撃して大きな蟹といった台詞は、初読時に鳥肌が立ち興奮したのを今でも覚えています。そして、再読の度にそのことを思い出してにやりとしてしまいます。

それともう一つ、P304~305のエラリーの父親に対する愛情を感じられる場面。涙を見せ、生きていると知って歓喜する場面も大好きです。

台詞=P53「殺人にはもってこいの場所だな。風さえもはまり役を演じている! あの妙なうなりを聞くといい。今夜はバンシーたちが総勢でおでましだ」

無神経な不安をあおるような台詞。後のミステリやホラーにどれだけの影響を与えたかはかりしれません。エラリーを嫌う方々の理由は、その無神経な発言か理由の一つなのでしょうが、私は、正直者だからととらえています。そんな正直なエラリーに好感が持てます。

○戯言

またまたデヴィッド・リンチねたであります。リンチがテレビドラマ「オン・ジ・エアー」(3話で放送打ち切り。4~7話まではビデオとLDでソフト化)の中で、「ハリーアップツインズ」というシャム双子役の二人の役者を登場させています。そして、昨年WOWOWで放送されたツイン・ピークスTheReturnでは、アローヘッド通りという住所がでてきました。(トロントに実際にある地名のようです。国営公園もあるようです。クイーン親子はカナダ帰りだったからアローヘッド館へ行ったのでしょうか?)

ツイン・ピークスでは、クイーンとの共通点が多く語られている中、他のドラマでもクイーンの影響を受けた様子が見られるということは、リンチはクイーン作品をかなり読んでいたのではないかと、またまた妄想してしまいます。アメリカのクイーンファンの方が訊いてくれないかしらと思うこの頃であります。

(参考文献)

「エラリー・クイーン論」飯城勇三著(論創社)
「エラリー・クイーンの騎士たち―横溝正史から新本格作家まで」飯城勇三著(論創社)
「エラリー・クイーン推理の芸術」フランシス・M・ネヴィンズ著 飯城勇三訳(国書刊行会)
「EQFC会誌 Queendom」

41st event

第41回 せんだい探偵小説お茶会主催

「魍魎の匣」読書会

せんだい探偵小説お茶会では、9月8日(土)に第41回読書会を開催します。今回の課題本は京極夏彦「魍魎の匣」です。

まずはホストからの紹介文をどうぞ。


昨年から始まった年1回の京極夏彦読書会。第2回目がやって来ました。

「箱を持ち歩く幽霊」「穢れ封じ御筥様」「美馬坂近代医学研究所」

3つの話が折り重なる箱、函、匣、筺、そして筥の物語をどうぞお楽しみください。


■日程 :2018年9月8日 15時30分~17時30分(途中退室可)

■会場 : 戦災復興記念館 / 第3和室
(仙台市青葉区大町2-12-1 戦災復興記念館3F TEL:022-263-6931)

■参加費 :一般 500円、学生 無料(会場費、諸経費等)

■持物 :京極夏彦 『魍魎の匣』 講談社

※定員は先着順で15名とさせていただきます。
※各自で必要に応じて飲み物をご持参ください。会場内に飲み物の準備はございません。

■申し込み :氏名・連絡先を明記のうえ、 sendai.mystery@gmail.com までご連絡ください。
※参加申し込み頂きました方へは、主催者側から受付完了のお知らせメールを返信いたします。

これまでの読書会でも、様々な年代・性別の方にご参加いただいております。ぜひ気軽にご参加ください。

また読書会終了後には懇親会を予定しておりますので、お時間のご都合がつく方は、こちらにもぜひご参加頂ければと思います。

 

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40th event

第40回 せんだい探偵小説お茶会主催

「シャム双子の秘密」&「ニッポン硬貨の謎」読書会

せんだい探偵小説お茶会では、6月30日(土)に第40回読書会を開催します。今回の課題本はエラリー・クイーン「シャム双子の秘密」と北村薫「ニッポン硬貨の謎」の2冊です。

まずはホストからの紹介文をどうぞ。


今年の天気もどうなっているのかしら?

暑い日、寒い日、地球のこれからに漠然とした不安を感じるそんな日々を、ミステリに夢中になって払拭してみては如何でしょうか?
そこで、わたくしクイーンファンは、皆様に読んでいただいて大変お得な課題書を第40回読書会に提供いたしたいと思います。
お待たせしました! 今年もやってまいりました。エラリー・クイーン祭り!

今回の謎の物語は,夏を迎えるにあたってミステリだけじゃものたりず、暑い夏気分を味わいたい。そんな方に本作品はぴったりてす!
また、今回はクイーン作品とも密接に関わってくる別の作品も併せて、2冊での読書会を開催します。
ページ数に物足りなさを感じていた方々には満足いただけるボリューム! 質、量ともに満足すること間違いありません!

どんな話かというと…。
1冊目はエラリー・クイーンの「シャム双子の秘密」。
クイーン父子が山火事に追われて逃げ込んだ医学博士の館。そこには手術のためにシャム双子が滞在していた。やがて起こる殺人事件! 被害者の手にはスペードの6のカードが握られていた…。
クイーン初のクローズドサークル館もの! 失われた代名詞! そして、昨年ミステリ業界を賑わせた話題作の原型となる作品!

2冊目は北村薫の「ニッポン硬貨の謎」。
1977年、エラリー・クイーンが出版社の招きで来日。その際に発生した幼児連続誘拐事件と、ガイドから聞いた五十円玉二十枚の謎の関連をエラリーは指摘しはじめる…。
北村薫が敬愛してやまない本格の巨匠クイーンの遺稿を翻訳したという体裁で「シャム双子の謎」論も入れ込んで描かれる華麗なパスティーシュ!

如何です? 2冊とも,手に取って読みたくなりますよね!
今回の課題本は本格ミステリの連峰、国名シリーズの1冊(国名シリーズ7作目),「シャム双子の秘密」 (エラリー・クイーン著 越前敏弥・北田絵里子 訳 角川文庫)と、本格ミステリとクイーン、物語に対する愛の伝道師、北村薫の「ニッポン硬貨の謎(エラリー・クイーン最後の事件)」(創元推理文庫)

2冊ともミステリ作品の可能性を追求した作品であり、本格ミステリの最高峰であることは間違いないと考えています。いや、間違いないのです!

なぜ,ホストはそう考えているのかを、ここで語るのは野暮というもの。ホストが何を語ろうとしているのかと思った方は,手にとって読んでいただき,本読書会に参加していただいて,初夏のエラリー・クイーン祭りを一緒に楽しんでいただければと思います。

是非、本読書会に参加してミステリの深淵に触れてみませんか。
奮っての御参加、心よりお待ちしております。


■日程:2018年6月30日 15時30分~17時30分(途中退室可)

■会場: 生涯学習支援センター(旧:中央 / 和室)
(宮城野区榴岡4丁目1番8号)

■参加費:一般 500円、学生 無料(会場費、諸経費等)

■持物:エラリー・クイーン 著『シャム双子の秘密』( 越前敏弥・北田絵里子 訳 角川文庫)北村薫 著『ニッポン硬貨の謎(エラリー・クイーン最後の事件)』(創元推理文庫)の2冊
※定員は先着順で15名とさせていただきます。
※各自で必要に応じて飲み物をご持参ください。会場内に飲み物の準備はございません。

■申し込み :氏名・連絡先を明記のうえ、 sendai.mystery@gmail.com までご連絡ください。
※参加申し込み頂きました方へは、主催者側から受付完了のお知らせメールを返信いたします。
これまでの読書会でも、様々な年代・性別の方にご参加いただいております。ぜひ気軽にご参加ください。

また読書会終了後には懇親会を予定しておりますので、お時間のご都合がつく方は、こちらにもぜひご参加頂ければと思います。

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39th event

第39回 せんだい探偵小説お茶会主催

陳浩基『13・67』読書会

せんだい探偵小説お茶会では、5月12日(土)に第39回読書会を開催します。今回の課題本は陳浩基『13・67』です。

※定員に達しましたので、申込み受付を終了とさせていただきます。

まずはホストからの紹介文をどうぞ。


 

みなさんは翻訳ミステリと言うとどこの国を思い浮かべますか?
ダントツはイギリス、ついでアメリカ、最近は北欧も人気ですね。
でも昨年末ある1冊と出会ったホストは「華文! 時代の最先端は華文!!」と声を大にして言いたいです。
その本に出会ってからホストは華文ミステリを読み漁りましたが、やはり出会いの1冊となった『13・67/著 陳浩基(ちんこうき サイモン・チェン)/訳 天野健太郎』は頭2つ、3つ飛び抜けて面白いです。
近すぎる故にか、あまり知られていない香港の文化、歴史を感じるミステリをお楽しみください。


 

■日程 :2018年5月12日 15時30分~17時30分(途中退室可)

■会場 : 戦災復興記念館 / 第1和室
(仙台市青葉区大町2-12-1 戦災復興記念館3F TEL:022-263-6931)

■参加費 :一般 500円、学生 無料(会場費、諸経費等)

■持物 :陳浩基  『13・67』 天野健太郎訳 文藝春秋

※定員は先着順で15名とさせていただきます。
※各自で必要に応じて飲み物をご持参ください。会場内に飲み物の準備はございません。

■申し込み :氏名・連絡先を明記のうえ、 sendai.mystery@gmail.com までご連絡ください。
※参加申し込み頂きました方へは、主催者側から受付完了のお知らせメールを返信いたします。

これまでの読書会でも、様々な年代・性別の方にご参加いただいております。ぜひ気軽にご参加ください。また読書会終了後には懇親会を予定しておりますので、お時間のご都合がつく方は、こちらにもぜひご参加頂ければと思います。

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38th event

第38回 せんだい探偵小説お茶会主催

白井智之『少女を殺す100の方法』食事会&温泉宿読書会

せんだい探偵小説お茶会では、3月31日(土)~4月1日(日)に第38回読書会を開催します。今回の課題本は白井智之『少女を殺す100の方法』です。

まずはホストからの紹介文をどうぞ。


 

2018年に入り、厳しい寒さが続いております。かじかむ心と身体に、せんだい探偵小説お茶会から朗報です!

当お茶会の創設者であり、このHPを覗いていらっしゃる方にはおなじみ・ミステリ作家の白井智之さんの新作を課題書に、食事会と温泉お泊まり読書会の開催が決定しました!!

課題書は1月に上梓された『少女を殺す100の方法』!!!
な、なんと! 合計100人の少女が死に至る短編集!!!!
感嘆符がうるさいのはご勘弁を。

本書は『少女教室』『少女ミキサー』『「少女」殺人事件』『少女ビデオ 公開版』『少女が町に降ってくる』の5短編から成り立っております。物語は冒頭からスプラッタームービーさながらの描写ではじまりますが、ページを繰るごと、そして一編読み終えるごとに、加速度的に本の世界へと誘われていき、中毒に陥るように、止められなくなることでしょう。

本格、クライムサスペンス、バイオレンス、ホラー、SF、純文学!
あらゆるジャンルの要素が網羅され、化学反応を起こした本書を、ぜひ手に取ってみてください。

ホストが個人的に『少女を殺す100の方法』を音楽に例えてみると、シューケーザーの名作、マイブラッティーヴァレンタインの「ラブレス」という美しさと驚きに満ちたアルバムを思い浮かべました。
ホストの戯言が気になった方は、是非アルバムも聴いてみてください。

当日はスペシャルゲストも顔を出すかも……?
皆さまのご応募をお待ちしております。


 

第一部
2018年3月31日(土)12:00~14:00 食事会(食事をしながらミステリについて語り合いましょう)
場所:仙台駅至近の某店舗
予算:ランチ代 1000円ぐらい
定員:先着15名

第二部
2018年3月31日(土)15:30~ 温泉宿読書会(『少女を殺す100の方法』読書会、カルタ大会、ゲーム大会等)
施設名: 秋保温泉某宿泊施設
持物 :白井智之 『少女を殺す100の方法』(光文社)
予算:宿泊代10000円ぐらい他、交通費や翌日の食事代等
定員:先着12名

■申し込み方法 :氏名・連絡先を明記のうえ、 sendai.mystery@gmail.com までご連絡ください。
応募の際に、食事会のみ参加か、温泉読書会のみ参加、 両方参加のいずれかをご連絡いただければと思います。参加者の方には、後日、場所の詳細をおしらせします。

不明点は上記のメールアドレスよりご連絡ください。
ご参加お待ちしております!

 

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37th event

第37回 せんだい探偵小説お茶会主催

レオ・ブルース 『ミンコット荘に死す』読書会

せんだい探偵小説お茶会では、2月17日(土)に第37回読書会を開催します。今回の課題本はレオ・ブルース 『ミンコット荘に死す』です。

今回は翻訳ミステリーが課題本となります。

参加条件などは全くございませんので、少しでも興味がございましたら、気軽にご参加いただけると嬉しいです。

それでは、今回のホストからの紹介文をどうぞ。


 

せんだい探偵小説お茶会では、以前にレオ・ブルースの「死の扉」が課題書として取り上げられました。
今回、福島読書会の主催者からレオ・ブルースの「三人の名探偵のための事件」を課題書で取り上げるので、となりの仙台と17~18日で読書会ツアーができるようにすれば、遠方から来られる方が二倍楽しめるのではないか。というようなお話をいただきました。
そこで、レオ・ブルースといえば近年文庫化されたものが2冊出ていたにもかかわらず、まだ手に取っていなかったことにホストはハタと気づいたのでした。
福島課題書で取り上げるのは、登場人物であるビーフ巡査がレギュラーのビーフ物。
仙台で取り上げた「死の扉」はパブリック・スクールの歴史教師キャロラス・ディーン物。
近年発売されたのは、ディーン物の2冊。そして、ホストは読みたいと思っていて、忘れてしまっていた作品!
「よし! わかった! 」と加藤武風に閃いて、福島読書会に抱っこして、読んでいない「ミンコット荘に死す」を課題書にすれば、レオ・ブルース祭りにすることができる!
ということで、ホストは決めたのでした。なんと無責任なと思われるかもしれませんが、そこは、どうかご勘弁を。
ホストは本書を読んではいませんが、ビーフ物の邦訳は読破しているくらい、レオ・ブルースはお気に入りの作家です。それくらい、レオ・ブルース作品は面白い!
そして、2015本格ミステリベスト10の海外部門では3位にランクインする本書なのですから、読んで面白くないわけがありません。
どうです、ホストも読んでいない作品に触れてみませんか?
どんな、お話かは読んでみてのお楽しみということで…。レッツ・ミステリ・リーディング!

また、2/18の福島読書会に参加される方はレオ・ブルース祭りへの参加特典ということで、仙台での参加費500円が無料になります!
奮っての御参加をお待ちしております。


 

■日程 :2018年2月17日 15時30分~17時30分(途中退室可)

■会場 :生涯学習支援センター(旧:中央/ 和室 )
(宮城野区榴岡4丁目1番8号)

■参加費 :一般 500円、学生 無料(会場費、諸経費等)

■持物 :レオ・ブルース 『ミンコット荘に死す』小林晋訳 扶桑社ミステリー
※定員は先着順で15名とさせていただきます。
※各自で必要に応じて飲み物をご持参ください。会場内に飲み物の準備はございません。

■申し込み :氏名・連絡先を明記のうえ、 sendai.mystery@gmail.com までご連絡ください。
※参加申し込み頂きました方へは、主催者側から受付完了のお知らせメールを返信いたします。

これまでの読書会でも、様々な年代・性別の方にご参加いただいております。ぜひ気軽にご参加ください。また読書会終了後には懇親会を予定しておりますので、お時間のご都合がつく方は、こちらにもぜひご参加頂ければと思います。

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36th event

第36回 せんだい探偵小説お茶会主催

高木彬光『刺青殺人事件』読書会

せんだい探偵小説お茶会では、12月16日(土)に第36回読書会を開催します。今回の課題本は高木彬光『刺青殺人事件』です。

今回は国内ミステリーが課題本となります。

参加条件などは全くございませんので、少しでも興味がございましたら、気軽にご参加いただけると嬉しいです。

それでは、今回のホストからの紹介文をどうぞ。

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『刺青殺人事件』は著者高木彬光のデビュー作であり、名探偵神津恭介が初めて登場する作品でもあります。
舞台は終戦1年後、昭和21年の東京。29歳の松下研三はある女と出会う。それから…どんな事件が起こるかは読んで確かめてください!
妖しい刺青の美に彩られた謎に若き天才神津恭介が挑みます。
本格が好き、名探偵が好き、密室ってきくとワクワクする!という方におすすめです。

ホストの筆では伝えきれませんが、神津恭介はとても個性的で魅力的なキャラクターです。神津恭介と出合ってから人生が3倍楽しくなりました。
未読の方はぜひ『刺青殺人事件』を読んで神津恭介と出会ってみてください。もちろん既読の方も神津大好きな同志の方も歓迎です。
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■日程 :2017年12月16日(土) 15時30分~17時30分(途中退室可)

■会場:泉区中央市民センター 和室(2)
(〒981-3117 泉区市名坂字東裏53番地の1)

■参加費:一般 500円、学生 無料(会場費、諸経費等)

■持物:高木彬光『刺青殺人事件』(光文社文庫他)
※各自で必要に応じて飲み物をご持参ください。(会場内に飲み物準備はございません)

■申し込み :氏名・連絡先を明記のうえ、 sendai.mystery@gmail.com までご連絡ください。
※参加申し込み頂きました方へは、主催者側から受付完了のお知らせメールを返信いたします。定員は15名とさせていただいていますので、満席となりましたら参加募集を締め切らせていただきます。

これまでの読書会でも、様々な年代・性別の方にご参加いただいております。ぜひ気軽にご参加ください。また読書会終了後には懇親会を予定しておりますので、お時間のご都合がつく方は、こちらにもぜひご参加頂ければと思います。

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35th event

第35回 せんだい探偵小説お茶会主催

綾辻行人『十角館の殺人』読書会

せんだい探偵小説お茶会では、10月14日(土)に第35回読書会を開催します。今回の課題本は綾辻行人『十角館の殺人』です。

今回は国内ミステリーが課題本となります。

参加条件などは全くございませんので、少しでも興味がございましたら、気軽にご参加いただけると嬉しいです。

それでは、今回のホストからの紹介文をどうぞ。

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設立より早三十回以上を数える我が読書会ですが、意外にも、綾辻行人さんの作品は初めて扱うこととなります。

長年ミステリを読み続け、造詣が深い方から、アニメやライトノベル等、本格ミステリ小説とは異なる分野をきっかけとして、小説を手に取るようになった方まで、綾辻氏の作品は今では幅広い読者層に支えられていることと思いますが、

今回は、作者のデビュー作に焦点をあて、会を進行していきます。

数ヶ月前、ホストが、たまたま十月の開催だからと、作品名に『十』が入り、個人的に好きな作品を選んだわけですが、期せずして九月五日には刊行三十周年を記念した愛蔵版が発売される運びとなり、何かしら運命(因縁?)じみたものを感じずにはいられません。

内容について、この場で詳らかに明かすことは控えさせていただくとして、あえて、一つ申し上げるとすれば、未読の場合、〈新装改訂版〉または〈愛蔵版〉の購入をお勧めします。

既に読まれた方はもちろん、現在未読の方もお待ちしてます。
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■日程 :2017年10月14日(土) 15時30分~17時30分(途中退室可)

■会場: 戦災復興記念館(第3和室)
(青葉区大町2丁目12番1号)

■参加費:一般 500円、学生 無料(会場費、諸経費等)

■持物:綾辻行人『十角館の殺人』(講談社ノベルス・講談社文庫)
※各自で必要に応じて飲み物をご持参ください。(会場内に飲み物準備はございません)

■申し込み :氏名・連絡先を明記のうえ、 sendai.mystery@gmail.com までご連絡ください。
※参加申し込み頂きました方へは、主催者側から受付完了のお知らせメールを返信いたします。定員は15名とさせていただいていますので、満席となりましたら参加募集を締め切らせていただきます。

これまでの読書会でも、様々な年代・性別の方にご参加いただいております。ぜひ気軽にご参加ください。また読書会終了後には懇親会を予定しておりますので、お時間のご都合がつく方は、こちらにもぜひご参加頂ければと思います。

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33rd report

第33回 せんだい探偵小説お茶会主催

エラリー・クイーン「スペイン岬の秘密」

読書会レポート

執筆者:クイーン・ファン

 

第一幕

 せんだい探偵小説お茶会がめでたく5年目を迎え、エラリー・クイーン作品の読書会が完全に年の恒例行事に定着した仙台! (昨年も同じような文句でしたが…ひと味違います。)

今回企画したのは、「スペイン岬の秘密」(角川文庫 訳 越前敏弥・国弘喜美代)でした。

 先ほど、ひと味違うと語ったのには訳があります。な、なんと! せんだい探偵小説お茶会で、初の定員締め切りとなったのであります。

 ホストが考えていた定員数は、15名でしたが、18名までの(な、なんと初参加が4名!)応募がありましたので、そこで締め切らせていただきました。他県に比べたら少ないかもしれませんが、時間内でミステリの深淵に触れるには限界の数であったと思います。

 さて、本題に入って、これまでの読書会で取り上げたクイーン作品は、ファンクラブ以外のランキングに取り上げられたものが多かったのですが、「スペイン」はランキングにはいったことはありません(「フランス白粉の秘密」もですね)。ですが1983EQFC(エラリー・クイーンファンクラブ)国名シリーズ+1アンケート7位、1997EQFC全長編アンケート16位、2014EQFC国名シリーズ+2アンケート6位と、クイーンファンの中では、評価が高い作品であります。

梅雨まっただ中ではありましたが、夏日の暑さ厳しい中、せんだい探偵小説お茶会で、どのような評価になるのか? 参加者の数から絶賛の声が上がるのではないか? ホストが読んでいく内に感じた漠然とした不安は、杞憂に終わるのか? と思案しながら、会場で参加者と向きあうこととなりました。

 

第二幕

 毎回、クイーン読書会では、作品にちなんだお菓子が出てきます。福島読書会の世話人の方からは、クイーンだから二人で半分にできる菓子が差し入れされました。ホストからは「スペイン産の材料が使われた菓子」でした。

お菓子を探し回ったのですが、見つけることができませんでした。提供してみると、ひねりが少なく、不完全燃焼気味でありました。言い訳にしか聞こえませんが、このお菓子に対する情熱の少なさも、作品に対して感じた漠然とした不安の表れだったのかもしれません。

 閑話休題。

 さて、自己紹介を終えて読書会は本書の内容へと。参加者の感想は以下のようなものでした。

「おいてけぼりにされた。納得しないうちに話が終わった」

「びっくりするくらい何も憶えていない。1回読んでいたことも忘れていた。読んでいる間は楽しいのに…」

「チャイナの変化球から原点に戻ろうとしたのでは。舞台装置と人物の配置から作者も納得のいく推理ができた作品とは思えるが、作者が迷っているのではないか」

「電話の一人芝居に感心。犯人が下着を身につけたのだろうか?」

「被害者をエラリーが蔑んでいるように思えた」

「犯人は推理しなくても、なんとなくそうかなと思っていた。最初のローザの強気ですごい女子だなと思った。最後は幸せになって良かった。服を脱がしたところがチャイナのことを思い出しました」

「あまりにも、手掛かりがあからさますぎて、犯人がわかりやすかった。でも推理というよりは手掛かりからの感じで犯人を当てた。手掛かりを与えすぎではないか」

「エラリーは母親がいないことから、許しを知らない。だから本作品では、人間的なものがない姿が見られた。ライツヴィルものに繋がる要素も見られた」

「最初の場面が大変だったのに、失踪した人を、そのあと誰も心配していない。だから…」

「登場人物紹介が面白い。ある登場人物の紹介が、かなり非道い」

「○○○○○○○夫人のいわれようが非道い! 死んでもなお、印象に残るなんてすごい!」

「謎解きに関しては評判が高いだけある。しかし、今の読者にはすぐわかるのではないか。ものたりなさを感じた。もっとエラリーにひっかかる影があると良い」

「二組の夫婦の描き方でのギャップが面白く読めた」

「他のクイーン作品に比べると物足りないと思った。警視がいないためかもしれない。冒頭から下降していく感じ。徹底した理論家と登場人物紹介で出ているので、それを作者が行いたかったのかな」

「うまくいいくるめられている感じがした。裸なのにマントや帽子、ステッキが残されていた謎が、一気に解かれるのではなく、マントの理由が明らかになってから解かれるので、二段のデコレーションケーキが一段になってしまったような気がして残念だった」

「意外性から見たら、意外じゃない犯人だったが、外部からか、屋敷内からかを考え、逃走経路を絞り込む論理には隙がないように思える」

「犯人の詰めは甘いんじゃないか。共犯者を逃がしたことは甘いと思う」

 

第三幕

 今回も、感想発表の終わりには、お茶会の重鎮、T氏からインタビュー形式の質問がありました。(実は前回の読書会でお会いした際に予告されていました)

「プロットが穴だらけである。推理に厳密性を欠く。魅力的な人物がいない(探偵が不愉快であることも含む)。文章が下手である。ユーモアに乏しい。スペイン岬はこの五つの要素を全て兼ね備えた作品である。その論証のためにインタビューをしたい」とはじまり,ホストが登場人物に扮して約25分のインタビューが行われました。その内容は、ホストが感じていた不安を大きく揺さぶり、作品世界を崩していきました。不安を大きくされるのではないかと思いましたが、ホストは清々しい気持ちになることができました。「スペイン岬」に激震を与えた主要な質問を簡易版でお届けします。

 犯人へのインタビュー

「救いたい人物のための犯行が、動機ではありますが、自分が疑われないようにするために取った行動のために、周りの人たちに容疑が向けられてしまったのではないですか」

「……すみません」

「時間や場所を限定している割には、計画的な犯罪とは思えないほど杜撰なところが多々見えるのではないですか」

「………動転していたからだと思います」

「屋敷内で殺害せず、別な場所で殺害して死体を隠せば良かったのではないですか」

「……………そうすればよかったです」
 探偵へのインタビュー

「この作品は、探偵であるあなたが文責であると考えてよいのですね」

「…はい」

「人間的要素を数学に置き換えて考えたがるあなたにとって、この事件の最大の問題は被害者がなぜ裸だったのかという謎を解くことでしたね。その解明を始めるにあたって、考えられる説は五つしか考えられないとおっしゃいました。それは、本当ですか?」

「………………………」

「あなたのお得意な論法、この問題について考えられる説は、A、B、Cの三つしかない。A説とB説は間違いである。したがって、正解はC説であるという類いのものは、数学の問題ならいざ知らず、人間の意思や行為に関わるような問題について、ある現象を説明する説をすべて挙げつくすことなどまず不可能だと思うのです。三説しかないと思っていても、必ずD説やE説という見落としがあるものです。繰り返し言います。服を盗む理由は五つしかないというというのは本当でしょうか?」

「…………………………………」

 その後、夏目漱石の『吾輩は猫である』のエピソードを用いられ、論理的な可能性の検討について、推論の信憑性を疑わせるには十分であることを指摘され、探偵はダウン!

 探偵は震える膝をこらえて、なんとかテンカウント以内に立ち上がった!

「○○○○○○○夫人の表現が非道すぎますね。なにか個人的な恨みでもあったのですか?」

「……チロル事件(本作品に名前だけ出てくる未解決事件)の関係者の一人が○○○○○○○夫人に大変似ていまして、その人物に煮え湯を飲まされ、そのストレスを○○○○○○○夫人に向けてしまったのかもしれません」

「読者への挑戦状なるものが挿入されているくらいですから、地の文にウソはないと思われます。しかし!」

「…………………………ぐはっ!」

 探偵はここでノックアウトとなりました。

 T氏のおっしゃることは、もっともでした。私が漠然と感じていた不安(プロットの穴と推理の厳密性)が明確になったところで、インタビューの終了となりました。
第四幕

 「あなたがもっとも好きなキャラクターと場面と台詞は?」

 キャラクターと場面と台詞はリンクしているものがほとんどでした。ここでは、好きなキャラクターを挙げていただいた人数と場面と台詞を合わせた形でお伝えします。

 エラリー(4人)「犯人を告発するシーン」「眼鏡をかけている理由」

 ティラー(4人)「できすぎるところ」「謙虚なところ」

 反面、嫌いな人も何人か。「できすぎるところ」「きざな台詞」 

 ペンフィールド(2人)「エラリーに負けていないところ」

 いない(1人)「かんべんしてください」

 マン夫妻(1人)「喧嘩のシーン」

 ローザ(1人)「強気な行動に出たところ」

 ウォルター・ゴドフリー(1人)「男らしさと優しさ。実はティラーがウォルターでティラーの影武者がウォルターだったのではないか」

 ステラ・ゴドフリー(1人)「夫に正直に話したところ」

 マクリーン判事(1人)「70歳を超えて、寝ずに頑張っているところ」

 ジョセフ・マン(1人)「裸一貫でのし上がったすごい男。一冊の本になりそう」

 コンスタブル夫人(1人)「最後の文章が綺麗」

 他にセシリアが暴れるところや解決シーンも出てきました。

 ホストは、思いもよらなかった意見や考えを聞くことができ、読書会の良さを再度実感することができました。

 参加者の皆さんが述べ終わったところで、2時間の読書会終了時間となりました。1冊の書物で、ぎりぎりの時間に終わったのは初めてのことでした。話したりないことが、それぞれに有り、懇親会へと移ると、ビールや他の飲み物と料理をいただきながら、ミステリ談義で盛り上がることができました。

 最後にT氏から「嫌いな作家なのに、インタビューの質問を考えるのに、結構な時間が掛かったよ」と聞き、「嫌いと言いつつ、実は愛に変わっているのではありませんか」と答えると素敵な微笑を見せていただきました。(本当にありがとうございました!)

 ホストは,今回も皆さんのおかげで,濃密で夢のように充実した時間を過ごすことができ,幸甚でありました。

 参加された皆さんが,正直な意見を語ってくれたことで,魅力とは何かを再度深めていく必要があると確認できました。今後も益々、ミステリの深淵に触れて行きたいと思います。

                                                                               終幕

アンケート結果

今回、読書会でアンケートに16名の方々にご協力していただき,結果が以下のようになりました。

せんだい探偵小説お茶会,それぞれのアンケート結果

プロット サスペンス 解決 文章 論理性 感動・余韻
参加者 6 9 8
参加者 7 6 8 7 8 7
参加者 10 8 8 6 8.5 7.5
参加者 7 3 8 6 6 6
参加者 7 7 8 7 8 6
参加者 5 5 7 5 8 5
参加者 7 8 6 6 7 5
参加者 4 2 4 3 4 1
参加者 6 8 8 8 7 8
参加者 6 6 8 5 7 6
参加者 7 7 8 6 8 5
参加者 6 7 8 8 6 7
参加者 6 6 7 5 7 5
参加者 6 7 5 7 4 6
EQⅢ 6 7 9 8 9 9
ホスト 6 4 10 8 10 7

せんだい探偵小説お茶会アンケートの平均点

プロット サスペンス 解決 文章 論理性 感動・余韻
平均点 6.4 5.9 7.6 6.3 7.3 6.2

EQFCアンケートの平均点

プロット サスペンス 解決 文章 論理性 感動・余韻
平均点 7.7 6.2 8.1 6.2 8.4 6.9

 な、なんと! クイーンに優しいせんだい探偵小説お茶会が、とうとうEQFCより辛い点数をつけてしまいました。もしかすると、クイーンを深く読み込むようになったため、この結果になってしまったのかもしれません。次回のエラリー・クイーン祭りでのアンケート結果も楽しみの一つとなりました。

飯城勇三氏のアンケート回答(Queendom83より抜粋)

01.「初読」の感想

 十一~二歳の頃かな。

 まず,犯人にビックリした。次に,エラリーの推理の鮮やかさに感心。服を脱がせた理由に感心したのではなく,その理由がただ一人の人物と結びつくロジックに感心したのだ――というのは後付けで,ただひたすらに感心した。

 最後に,「あとがき」に感心。普通なら無条件に容疑者から外していいはずの○○○○○○まで検討対象に入れ,しかも,消去するデータまで組み込んでいるとは……。最後の最後まで謎解きにこだわるクイーンに感動。
02.「再読」の感想

 解決編だけ再読すると気づかないのだが,通して読むと,ちょっとズルイ。本作で気に入らない点がもう一つ。パズルとして見た場合,最初の百ページと最後の百ページさえあれば充分なのだ。つまり,真ん中の二百ページほどは不要ということになる。(ただし,これは「パズルとしては」であって,「ミステリーとしては」ではないが。)
03.「スペイン岬の秘密」を以下の点から評価してください。(各項目10点満点。10点の基準はこれまで読んで来たミステリ作品で,10点と思えるものと比較して点数をつけてください。)

プロット=(6),サスペンス=(7),解決=(9),文章=(8),パズル性(論理性)=(9),感動・余韻=(9)
04.あなたがもっとも好きな(印象深い)キャラクターと場面と台詞

キャラ:ピッツ

場面=第十五章のラスト,エラリーが犯人を告発するシーン。

台詞=第七章,ローザから「眼鏡をとるとハンサムだ」と言われたエラリーが「胸に一物ある女を避けるために眼鏡をかけている」と返したセリフ。
ホストのあれこれ

01.「スペイン岬の秘密」を読んだ感想

○今回の読書会に向けて(ジュブナイルも含めて)4回読了。計6回目読了。旅先の事件で,期間が短いことから,物語の起伏(ドラマティックな展開,読む側が翻弄されること)が少なく,国名シリーズの中でも落ち着いた雰囲気が見られると思いました。

 推理については,「裸にされた理由」に初読の時,膝を打ちました。こんなにもシンプルなものだったのかと,唖然とした記憶もあります。その後に展開される,消去法については,フムフム成程と感心しつつも「裸にされた理由」の方がインパクトが強かったので,そちらばかり残っていました。日本のミステリ映画の某シーンも思い出していたからかもしれません。ただ,再読を重ねていくと,飯城さんもおっしゃっていましたが,犯人への絞り込みの仕方と伏線,状況の提示していく順番の巧みさとタイミングに舌を巻き,感心から感動へと気持ちが変化していきました。

 有栖川有栖の「孤島パズル」と重なる部分があると思うところがあります。謎の設定はクイーン作品の方がハデではありますが,物語の感動と美しさは……。ただ,有栖川有栖は「スペイン岬」も念頭に入れて作品を作られたと信じたいと思います。そう考えると「スペイン岬」がなければ「孤島パズル」のような素晴らしい作品は世に出なかったのではないかと思います。

 初読でも犯人を当てることはできるかもしれません(ちなみに私はすっかり騙されました)。だからといって「読者への挑戦」(作者)に勝利したと考えることは難しいと思います。クイーン作品は「犯人を当ててみて」とか「トリックを当ててみて」ではないのです。「エラリーは,どんな意外な推理をしたか当ててみて」と挑戦しているのだと思います。エラリー・クイーン Perfect Guideの「スペイン岬の謎」にも飯城さんが書いていたように,犯人以外を消去する理論を考えた場合,ストイックなまでに「余分な部分」がない状況を作っていったのが本書だと思います。それは,犯人を当てただけでは得られない推理の感動があるからだと思います。

 法月綸太郎の評論「大量死と密室」の中で,「チャイナ」が「大戦間探偵小説」の時代に有りながらも,「大戦間探偵小説」に疑問を感じて「無名の被害者」と「トリック成立のために死体をモノ化してあつかう」ことを行い,「大戦間探偵小説」を超えた荒涼とした光景を見せ,ミステリを新たな地点へと向かわせたのではないかと語っています。その「チャイナ」の次の長編が本作であることを考えると、もっと奇をてらったものになりそうでしたが、そうではありませんでした。もしかすると「チャイナ」以上のことをしてみたいとクイーンは考えていたのかもしれません。そこで、バールストン先攻法ではない「犯人の不在」をしてみようと本作品に取り組んだのではないでしょうか。ただ、解明まで行ってみると,結果的にはオーソドックスなものになってしまったのではないでしょうか。穿った見方をすればメタ的な「犯人不在」を見据えていたのかもしれません。しかし、それだとあまりにも前衛的になってしまうので(現在では何作かあります),着地に至ったらオーソドックスなものになったのでしょう。オーソドックスな犯人隠しに「意外と思える程の消去の理論を用いた推理」を提示した作品が本作なのだと思います。プロットと推理には穴があります。しかし、クイーンは模索しながらミステリの底上げを図っていったことは間違いありません。なぜなら、後進に与えた影響はあまりにも大きいのですから。
02.「スペイン岬の秘密」の点数。

プロット=(6)「」,サスペンス=(4)「」,解決=(10),文章=(8),パズル性(論理性)=(10),感動・余韻=(7)「あまりにも作者クイーンの状況設定の持って行き方が巧みであることと,後続のミステリ作家に影響を与えた感動に。」
03.あなたがもっとも好きな(印象深い)キャラクターと場面と台詞

キャラ:ティラー

P192「ティラー,きみともっと近づきになりたいよ。すぐに気の合う仲間になれそうだ」

P203 エラリーから「一本どうだい」と煙草を差し出されるが断る。

P209「女性に悪態をつく男性には<略>亭主です」との言葉に「お見事!」とエラリーの賛辞。

P424「ティラーはこの事件でただひとつの明るい光であり,褒賞を受けるに値します」

尊敬する人物に認められ,褒められるなんて,なりたい人物の姿がそこにありました。(エラリーの引用についても答える博識なところも良かったです。執事ではないのに貴族探偵の執事やウッドハウス,アシモフも思い浮かべました。)

場面=第十六章全部。

台詞=P89のプルードンの言葉「財産,それは盗奪である」のあとに「すると,気分が軽くなります。ぼくはつまらない人間ですが,相手が-まあ-泥棒なら,引け目を感じることはない。ですから,気楽にやりましょう」

エラリーの諧謔を弄する中にも,小市民的に見えるところがいいです。

飯城さんのあげた台詞も候補でしたが,上記の台詞を一番にしました。
○戯言

 TWIN PEAKS The Returnがはじまりました。鼻息荒くして見ています。それで,なぜ,この場でその話題を出したかというと,この新シリーズで最初に出てきた死体が,『こりゃ,エジプトとスペインですか!』と叫びたくなるようなものだったからです。

(これを語ってもネタバレには全く繋がらないと考えています。ですが,この文章を読んで,見る楽しみを奪われたと思った方がいましたら申し訳ありません) 

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ケイト・サマースケイル『最初の刑事』読書会につきまして

2017年8月16日

こちらで9月30日(土)の開催を告知しておりましたケイト・サマースケイル『最初の刑事』読書会ですが、諸般の都合により、開催を中止させていただくことになりました。
お楽しみにして頂いていた皆様、申し訳ございませんでした。

次回読書会の日程が決まりましたら、あらためて告知をさせていただきます。
今後ともせんだい探偵小説お茶会を何卒よろしくお願いいたします。

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34th event

第34回 せんだい探偵小説お茶会主催

京極夏彦『姑獲鳥の夏』読書会

せんだい探偵小説お茶会では、8月6日(日)に第34回読書会を開催します。今回の課題本は京極夏彦の『姑獲鳥の夏』です。

※定員に達しましたので、申込み受付を終了とさせていただきます。

今回は国内ミステリーが課題本となります。

参加条件などは全くございませんので、少しでも興味がございましたら、気軽にご参加いただけると嬉しいです。

それでは、今回のホストからの紹介文をどうぞ。

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8月せんだいでは七夕祭りがあります。
七夕と時期を前後して雑司ヶ谷では、鬼子母神のお祭りが行われます。
『鬼子母神のお祭り』この単語だけで、私は“あの本”を思い出してワクワクしてしまいます。

そして、黒い着物に黒い革手袋をした作家を知っていますか。
講談社文庫の棚でやけに場所をとっている、鼠色の背表紙の文庫本を知っていますか。
わかった方、おめでとうございます、正解です。
仲良くしてください。
わからない方、おめでとうございます。人生の楽しみが増えます。(当社比)

この夏、ついに、とうとう“あの本”を課題書にする日が来てしまいました。
第34回せんだい探偵小説お茶会の課題書は
「姑獲鳥の夏/京極夏彦」です。

黒い着物に革手袋の怪しげな作家・京極夏彦が織りなす
蘊蓄溢れるレンガ本の世界をどうぞお楽しみ下さい。
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■日程 :2017年8月6日 15時30分~17時30分(途中退室可)

■会場 :生涯学習支援センター(旧:中央/ 創作室(2) )
(宮城野区榴岡4丁目1番8号)

■参加費 :一般 500円、学生 無料(会場費、諸経費等)

■持物 :京極夏彦 『姑獲鳥の夏』(講談社、単行本、ノベルズ、文庫どれでもOK)
※各自で必要に応じて飲み物をご持参ください。(会場内に飲み物準備はございません)

■申し込み :氏名・連絡先を明記のうえ、 sendai.mystery@gmail.com までご連絡ください。
※参加申し込み頂きました方へは、主催者側から受付完了のお知らせメールを返信いたします。これまでの読書会でも、様々な年代・性別の方にご参加いただいております。ぜひ気軽にご参加ください。また読書会終了後には懇親会を予定しておりますので、お時間のご都合がつく方は、こちらにもぜひご参加頂ければと思います。

 

 

「鵼の碑」はまだかなあ。

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33rd event

第33回 せんだい探偵小説お茶会主催

(翻訳ミステリー大賞シンジケート後援)

エラリー・クイーン『スペイン岬の秘密』読書会

せんだい探偵小説お茶会では、7月8日(土)に第33回読書会を開催します。今回の課題本はエラリー・クイーン『スペイン岬の秘密』です。

今回は翻訳ミステリーが課題本となります。

※定員に達しましたので、申込み受付を終了とさせていただきます。

 

参加条件などは全くございませんので、少しでも興味がございましたら、気軽にご参加いただけると嬉しいです。

それでは、今回のホストからの紹介文をどうぞ!

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皆様,如何お過ごしでしょうか? 暑い5月から,少し肌寒い6月に入り,今年の天気はいったいどうなってしまったんだ,梅雨は来るのかと,心配しつつ,わたくし次回のホスト,クイーンファンは第33回読書会、課題本にふさわしい,陽射しまぶしい7月のことを思い浮かべております。
クイーンファンを名乗っているのですから,慧眼なる皆様は,もうおわかりでしょう。そうです,今年もやってまいりました。クイーンまつりが!
今回の謎の物語は,夏の終わりが舞台ではありますが,時期は、ぎりぎり合っているといって良いでしょう。なぜならジュブナイルの題名は「夏別荘の怪事件」。ミステリだけじゃものたりない。夏気分も味わいたい! 本作品は,7月の読書会にはぴったりの作品であるはずです!

どんな話かというと…。
スペイン岬と呼ばれる花崗岩塊の突端にある別荘の海辺で,海に向かってテラスの椅子に腰掛けていた死体は,黒い帽子を被り,舞台衣裳めいた黒のマントを肩から掛け,ステッキを手にし…あとはまったくの裸だった!大西洋に突き出した岬に建つ大富豪邸で起きた殺人事件。解決に乗り出したエラリ-を悩ませる謎はただひとつ!  なぜ犯人は被害者の服を脱がせたのか?
如何です? もう,手に取って読みたくなったでしょう! 今回の課題本は誉れ高き国名シリーズの1冊(国名シリーズ9作目にして掉尾),「スペイン岬の秘密」 (エラリー・クイーン著 越前敏弥・国弘喜美代 訳 角川文庫)です。

本作品はクイーン作品の中でも,犯人を当てやすいと思われる方がいるのではないかと思います。また,クイーンといえば「読者への挑戦」を掲げる作品がいくつかあるのですから,「読者への挑戦」を掲げるほどのものではないと思われる場合もあるかと思います。ですが,本作品は,その「読者への挑戦」,そして本格ミステリの最高峰であると,ホストは考えています。おっと,これ以上を語るのは野暮というもの。「犯人を当てる」のでなければ,何のための「読者への挑戦」? そう疑問に思った方は,是非手にとって読んでいただき,本読書会に参加していただき,夏のクイーン祭りを一緒に楽しんでいただければと思います。
是非、本読書会に参加してミステリの深淵に触れてみませんか。
奮っての御参加、心よりお待ちしております。

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■日程:2017年7月8日 15時30分~17時30分(途中退室可)

■会場: 生涯学習支援センター(旧:中央 / 和室)
(宮城野区榴岡4丁目1番8号)

■参加費:一般 500円、学生 無料(会場費、諸経費等)

■持物:エラリー・クイーン『スペイン岬の秘密』
※各自で必要に応じて飲み物をご持参ください。(会場内に飲み物準備はございません)

■申し込み:氏名・連絡先を明記のうえ、 sendai.mystery@gmail.com までご連絡ください。
※参加申し込み頂きました方へは、主催者側から参加可能可否の返信をさせて頂いております。

これまでの読書会でも、様々な年代・性別の方にご参加いただいております。ぜひ気軽にご参加ください。

※読書会終了後には懇親会を予定しておりますので、お時間のご都合がつく方は、こちらにもぜひご参加頂ければと思います。

 

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31st report

第31回 せんだい探偵小説お茶会主催

パーシヴァル・ワイルド「検死審問」

読書会レポート

執筆者:蒔野正徳

3月20日にせんだい探偵小説お茶会にて、第31回の読書会を開催いたしました。
今回の課題図書はパーシヴァル・ワイルド「検死審問」。
既に絶版になっていることを知らずに告知を出してしまった世話人。。。
周りから指摘されて初めて既に絶版であることを知り、青くなりつつもAmazonをポチり。
な~んだ、マーケットプレイスで200円とか300円で買えるじゃん。大丈夫大丈夫♪・・・と思いつつも参加申し込みが来るまでは安心できないぞ、と。
告知時に訳者である越前先生も参加を表明。
お、ということは越前先生が何冊か提供してくれたりなんて。。。と他力本願なことを思っていたら、手元に1冊しかないことを告げられ、あえなく撃沈。
不安いっぱいで読書会当日を迎えるわけですが、結局はホスト、越前先生を含めて過去最多の16人に参加頂けました。
ありがたやありがたや。
しかも、参加された中で図書館から借りての参加者はおらず、皆さんが何らかの方法にて課題本を入手しての参加で、これには越前先生も私もびっくりでした。
みなさんからのお菓子の差し入れに手をのばしつつ、読書会が開始となりました。
(みなさん、毎度毎度のお菓子の差し入れ、ありがとうございます)
★ ネタバレではないですが、未読の方は以下の感想を読まないほうが、より作品を楽しめるかと ★
みなさんからの感想としては、好意的な意見が多く、
「ベネットが探偵小説について語っている部分がおもしろかった。特に、「腕利きの探偵が・・・」の部分」
「ベネットの小説があったら、好きになりそう。ベネットの作品はハーレクイン作品かも」
「〇〇が嫌いで、死ねばいいのに。と思ってたら、ホントに死んだ」
「最初に芝刈り人が語っているので、家主であるベネットが殺されたと思って、読み進めていたので、中盤でベネットが生きていることが分かって驚いた」
「三谷幸喜作品のように思えた」
「ベネットが推理小説に関してけちょんけちょんに言っているが実は好きなんじゃないかな、と思われた」
「この作品については、批判めいたことは一切言わない。それぐらい好き」
「ユーモアミステリであり、謎解きはどうでもよい」
「証言者ひとりひとりが個性的」
中でも、
「ベネットが殺されていたと思ってた」
という意見が多く聞かれました。
確かに、使用人が証言している段階で、家主やお金持ちが殺される、というのは定番の1つですからね。
★★★ ここまで ★★★
読書会後は懇親会へと流れるのが通例ですが、今回はもうひとつイベントを設けてみました。
当読書会の発起人が作成したミステリーカルタでのカルタ大会です。
取り札がミステリー小説の装丁、読み札が裏表紙の解説という作り。
登場する作品は、過去に当読書会で課題本となったミステリー+α
これがかなりのクオリティー!
量産して販売したら。。。と下世話なことも思いつつ。
さて、参加者全員でのカルタ大会となり、みなさんかなり白熱した戦いを繰り広げていました。
自分の好きな作品はどうしても取りたい!との思いから身を投げ出して取りに行く人も。
当然、自分の好きな作品はよく知っているから、取りやすいはず。
しかし、そこはこのカルタ、一筋縄ではいかないのです。
エラリー・クイーンを題材にすることが多いことから、全取り札の4分の1程度がクイーン作品という始末。
さらには、Xの悲劇、Yの悲劇については、出版社違いで同一作品が複数枚存在するというマニア仕様。
普通、出版社毎の裏表紙の解説の違いなんて覚えてませんから。。。
最終的には、当読書会の重鎮2名が同数の取り札でトップとなりました。
うちの1名はお手付き回数でもトップでしたが。
白熱したカルタ大会の後は懇親会。
ミステリー小説とカルタ大会の感想を肴においしいビールをいただきました。
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32nd event

第32回 せんだい探偵小説お茶会主催

森下雨村『白骨の処女』読書会

せんだい探偵小説お茶会では、5月20日(土)に第32回読書会を開催します。今回の課題本は森下雨村『白骨の処女』です。

今回は国内ミステリーが課題本となります。

参加条件などは全くございませんので、少しでも興味がございましたら、気軽にご参加いただけると嬉しいです。

それでは、今回のホストからの紹介文をどうぞ!

 

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ミステリ読書会界隈では古典と言えば仙台と言われるほど
海外回の課題書が濃厚なせんだい探偵小説お茶会ですが
国内回の課題書はちょっと軽めが多いです。
国内回も少しレベルアップをしたいなぁ…
でも、オススメ出来るほどの物を読んでないし…と思っていたやさきに
福島読書会のHさんから
「河出が最近復刊した『白骨の処女/森下雨村』が面白い」
と勧めていただき読んでみると
なぜコレが今まで埋もれてたのだ
なぜ森下雨村は埋もれてしまったのだ
と思うほど面白い一冊でしたので、さっそく課題書に選んでみました。

“探偵小説の父” ”乱歩世代最後の大物”とも評される
新青年初代編集長・森下雨村の埋もれた名作『白骨の処女』
ぜひ御一読下さい。
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■日程:2017年5月20日 15時30分~17時30分(途中退室可)

■会場:生涯学習支援センター(旧:中央/第一セミナー室C)
(宮城県仙台市宮城野区榴岡4-1-8)

■参加費:一般 500円、学生 無料(会場費、諸経費等)

■持物:森下雨村『白骨の処女』
※各自で必要に応じて飲み物をご持参ください。(会場内に飲み物の準備はございません)

■申し込み:氏名・連絡先を明記のうえ、sendai.mystery@gmail.comまでご連絡ください。
※参加申し込み頂きました方へは、主催者側から参加可能可否の返信をさせて頂いております。
これまでの読書会でも、様々な年代・性別の方にご参加いただいております。ぜひ気軽にご参加ください。

また読書会終了後には懇親会を予定しておりますので、お時間のご都合がつく方は、こちらにもぜひご参加頂ければと思います。

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31st event

第31回 せんだい探偵小説お茶会主催

(翻訳ミステリー大賞シンジケート後援)

パーシヴァル・ワイルド『検死審問 -インクエスト-』読書会

せんだい探偵小説お茶会では、3月18日(土)に第31回読書会を開催します。今回の課題本はパーシヴァル・ワイルドの「検死審問 -インクエスト-」です。

今回は翻訳ミステリーが課題本となります。

参加条件などは全くございませんので、少しでも興味がございましたら、気軽にご参加いただけると嬉しいです。



検死審問という日本では聞きなれない英米の司法制度を題材にした名作。
「法に照らし合わせて、罪の有無を決める」という一般の裁判とは異なり「死因を法的に確定させる」という何ともビミョウな制度。(あくまで私見です。)

本書は検死官リー・スローカムを中心に物語は進んでいくのですが、この検死官がとんでもない。
「法律では、わたしはなんでも好きにしていいとされている。」
とのことから、好きなように検死審問を進めていく。
例えば、やたらと審問を引き延ばそうとする理由が、陪審員は日当3ドル、検死官は1ページの証言を聴取するごとに25セント、速記者は1ページ書きあげるもしくは読み上げる毎に10セントもらえるというもの。
(しかも、速記者にはスローカムの娘を任命するという公私混同も甚だしい始末)

一見関係なさそうな証言から徐々に事件の詳細が浮き彫りにされていくストーリーは秀逸の一言。
かの江戸川乱歩が「1935年以降のベスト・テン」の1作として本作を上げているほど。

「名作は色褪せない」そんな本作を是非、ご一読。

今回は、特別ゲストとして、訳者の越前敏弥先生もいらっしゃいます。
翻訳秘話などお聞きできるチャンスです。

 

■日程:2017年3月18日 15時30分~17時30分(途中退室可)

■会場:青葉区中央市民センター 和室
(宮城県仙台市青葉区一番町2-1-4)

■参加費:一般 500円、学生 無料(会場費、諸経費等)

■持物:パーシヴァル・ワイルド『検死審問 -インクエスト-』

※各自で必要に応じて飲み物をご持参ください。(会場内に飲み物の準備はございません)

■申し込み:氏名・連絡先を明記のうえ、sendai.mystery@gmail.comまでご連絡ください。

※参加申し込み頂きました方へは、主催者側から参加可能可否の返信をさせて頂いております。

これまでの読書会でも、様々な年代・性別の方にご参加いただいております。ぜひ気軽にご参加ください。

また読書会終了後には懇親会を予定しておりますので、お時間のご都合がつく方は、こちらにもぜひご参加頂ければと思います。

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30th event

第30回 せんだい探偵小説お茶会主催

奥泉光『吾輩は猫である殺人事件』読書会

せんだい探偵小説お茶会では、12月10日(土)に第30回読書会を開催します。今回の課題本は奥泉光の『吾輩は猫である殺人事件』です。

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今回は国内ミステリーが課題本となります。

参加条件などは全くございませんので、少しでも興味がございましたら、気軽にご参加いただけると嬉しいです。

それでは、今回のホストからの紹介文をどうぞ。

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夏目漱石没後100年の今年、お茶会でも漱石を取り上げられないかしらと思ったとき、まっ先に浮かんだのがこの本――奥泉光『『吾輩は猫である』殺人事件』です。漱石の文体模写により『猫』の続篇をミステリー仕立てで書いたという超絶技巧の作品。

著者自身によるPRは次のとおり――

「『猫』の最後で麦酒に酔って溺死したはずの猫が上海に現れて、苦沙弥先生の殺害を知るところから小説は始まります。一体誰が犯人なのか、迷亭か独仙か、はたまた東風か寒月か。前半の読み所は国際都市上海に集った世界の猫による一大推理合戦です。後半はスリルとサスペンスに満ちた猫の冒険。これにはかなり自信があるんです。迷亭、寒月といったお馴染みの登場人物も総出演します。とにかく、小説の面白さを何もかも詰め込んだ作品でして、少なくとも、近代小説史上、著者自身がこれほど絶賛した作品はない(笑)。

これを十分味わうにはやはり、まず漱石の『吾輩は猫である』を読んでおくべきでしょう。ストーリー的には特に関連はありませんが、キャラクター設定を呑み込んでおいた方がよいので。まだ『猫』を読んだことがなかったという方は、日本文学の古典を一つ制覇するチャンスですぞ。

両作ともボリュームたっぷりですが、ナニ恐れる必要はありません。一たび文章のリズムに乗ってしまえば、湧き返る言葉の奔流に気持ちよく運ばれていくばかり。さあ、おじけるな。名無し君とともに、跳べ!

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■日程:2016年12月10日 15時30分~17時30分(途中退室可)

■会場:戦災復興記念館 第3和室
(青葉区大町2丁目12番1号)

■参加費:一般 500円、学生 無料(会場費、諸経費等)

■持物:奥泉光『吾輩は猫である殺人事件』(河出文庫)
夏目漱石『吾輩は猫である』

※各自で必要に応じて飲み物をご持参ください。(会場内に飲み物の準備はございません)

■申し込み:氏名・連絡先を明記のうえ、sendai.mystery@gmail.comまでご連絡いただくか、Twitterにて@sendaimysteryまでリプライまたはDMを送ってください。

※携帯メールは受信できない場合があるようです。主催者側から返信の無い場合は、お手数ですがPCメールで再度ご連絡ください。

これまでの読書会でも、様々な年代・性別の方にご参加いただいております。ぜひ気軽にご参加ください。

また読書会終了後には懇親会を予定しておりますので、お時間のご都合がつく方は、こちらにもぜひご参加頂ければと思います。

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29th event

第29回 せんだい探偵小説お茶会主催

(翻訳ミステリー大賞シンジケート後援)

アガサ・クリスティー『ナイルに死す』読書会

せんだい探偵小説お茶会では、11月19日(土)に第29回読書会を開催します。今回の課題本はアガサ・クリスティーの「ナイルに死す」です。

今回は翻訳ミステリーが課題本となります。

参加条件などは全くございませんので、少しでも興味がございましたら、気軽にご参加いただけると嬉しいです。

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古典といえば「仙台」というほど、せんだい探偵小説お茶会では古典本格ミステリを課題図書としてきた実績があります。

しかしながら、何故なんでしょう、〈ミステリの女王〉ことアガサ・クリスティーは取り上げられることがほとんどありませんでし た。

クリスティー派も声を上げなくては、このままではいけないとの危機感から、今回はアガサ・クリスティー『ナイルに死す』を課題 図書といたしました。

クリスティーのミステリ作品中一番長いものであり、その本の厚さゆえに読むことをためらっていた方も多いのではないでしょう か。
この機会を逃さず挑戦して下さい。
今までこの本を読んでなかったことをあなたは後悔するでしょう。

何といっても舞台はナイル河をさかのぼる豪華客船の船上ですのよ、ゴージャス!
親友ジャクリーンの婚約者だったサイモンを奪い、目下新婚旅行中の美貌でお金持ちのリネット。
その幸せをぶち壊したくストーカーとなり、どこまでもつきまとうジャクリーン。
何故かその不穏のただ中にいるエルキュール・ポアロ。
そして惨劇の幕明け。

この本を読まずにクリスティーを語るなかれでございますよ。
事件がなかなか起きないから、この本は退屈だなんておっしゃらないで。
事件は既に始まっているのですよ。あなたが本を開いたときから。

読書会にて皆さまの感想を聞かせて下さいませ。

■日程:2016年11月19日 15時30分~17時30分(途中退室可)

■会場:シルバーセンター 和室
(宮城県仙台市青葉区花京院1-3-2)

■参加費:一般 500円、学生 無料(会場費、諸経費等)

■持物:アガサ・クリスティー『ナイルに死す』

※各自で必要に応じて飲み物をご持参ください。(会場内に飲み物の準備はございません)

■申し込み:氏名・連絡先を明記のうえ、sendai.mystery@gmail.comまでご連絡いただくか、Twitterにて@sendaimysteryまでリプライまたはDMを送ってください。

※参加申し込み頂きました方へは、主催者側から参加可能可否の返信をさせて頂いております。

これまでの読書会でも、様々な年代・性別の方にご参加いただいております。ぜひ気軽にご参加ください。

また読書会終了後には懇親会を予定しておりますので、お時間のご都合がつく方は、こちらにもぜひご参加頂ければと思います。

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27th report

第27回 せんだい探偵小説お茶会主催

エラリー・クイーン『チャイナ蜜柑の秘密』

読書会レポート

執筆者:仙台のクイーンファン

第一幕
せんだい探偵小説お茶会がめでたく4年目を迎え,エラリー・クイーン作品の読書会が年の恒例行事となり(えっ,いつ?),今回企画したのは,「チャイナ蜜柑の秘密」(角川文庫 訳 越前敏弥・青木 創)でした。
これまでの読書会で取り上げたクイーン作品は,数あるランキングの中でも燦然と輝く評価を得ていましたが,「チャイナ」は1983EQFC(エラリー・クイーンファンクラブ)国名シリーズ+1アンケート9位,1997EQFC全長編アンケート13位,2014EQFC国名シリーズ+2アンケート9位,「密室大集合」アンケート8位と,EQFCの中でも評価の分かれる作品でありました。ですが,作者の一人,フレデリック・ダネイが自選1位にした本書。
梅雨明けを迎えた翌日で,暑さの厳しい中,せんだい探偵小説お茶会では,どのような評価になるのか?とホストは不安を抱えながら,会場で参加者と向きあうことになりました。
ホストは,参加者が少ないのではないか(作品のせいではありません。ホストの宣伝に対する不安です)と危惧していましたが,12名の参加者の方々に参加していただきました。そして,今回も前回の「エジプト十字架の秘密」読書会同様,アンケートも書いていただき,読書会が始まったのでした。

第二幕(「チャイナ蜜柑の秘密」のネタバレあり。未読の方は,絶対ここから下は読まないでください。絶対に後悔します。)

★既読の方は、反転してお読み下さい★
毎回,クイーン読書会では,作品にちなんだお菓子が出てきます。福島読書会の世話人の方からは,意見として「冷凍蜜柑」を進められていましたが,ホストは「蜜柑」から「オレンジクッキー」。そして密室からキューブ型の「生キャラメル」を出させていただきました。他に世話人から「オレンジマカロン」。参加者からは「チョコレートオレンジ」や本物の「蜜柑」をいただきました。
閑話休題。
さて,自己紹介を終えて読書会は本書の内容へと。初読の方は8名,その内で犯人がわかった方は0名と解釈しました。再読の方でカーの「三つの棺」を読む前に,読んでおくべき「密室」作品の中に本書が提示されていたので,読んだというYさん。Yさんは「密室」と知っていたから,「密室に閉じ込められたのは一人だから」という論理で,初読時に犯人を当てることができたようです。某出版社の古い訳の見開き紹介文や密室アンソロジーのアンケート結果にも本書の名前が出ていて,それを目にしてはいましたが,ホストは初読時に犯人を当てることができませんでした。Yさんの慧眼に感服しました。

「感想や疑問点」をキーワードに参加者の方々から,それぞれお話をうかがうと,
「表紙がかわいすぎ」
「全体に楽しげな感じ」
「この密室は作れないのではないか」
「密室の作り方がわかりにくい」
「本当にわかりにくい」
「EQFCの『チャイナ橙クッキング』を見てやっとわかった」
「大丈夫です」
「作者が『逆向き』という言葉をつかって話を創りたかったんだろうな」
「犯人が死なないような場所で,謎解きをすればいいのに」
「創元推理版はですます調で,新訳版は砕けた感じのしゃべり方になっていることに気付いたとき,事件と関係があると思っていましたが,関係なかったので残念でした」
「犯人のところに,入れ替わり立ち替わり人が訪れているシーンで,この人が犯人ではあり得ないと,すり込まされたところに感心した」
「聖職者の格好がイメージできないところが残念だった」
「楽しさはいつ始まるの?結構,体力のいる読み物だった」
「ホテル住まいが,かっこいいと思った」
「みんなの意見を聞かないと気づけない部分が多い作品」
「20分ですべて逆向きにする意味がわからない」
「この犯人の心理がわからない」
「JJマックがプロットでわかったと書いてあって,本当にわかったの?」
「被害者の扱いが,ひどいと思えた」
「論理について,自分が決めたルールにこだわりすぎているのではないか」
「蜜柑に意味がなかっのは,拍子抜け」
「論理がトリックでぶちこわされた」
「手紙を盗むのは,いかがなものか」
「クイーンらしくない作品」
「カーに近いかな。ディクスン・カーが書いたら大傑作になったのでは」
「唯一完全なアリバイを持っている人間が,容疑者に変わってしまうところが面白い」
「論理が無茶苦茶」
「おもったよりも,つまらなくなかった」
「ジューナが可愛かった」
「ディバーシーさんが共犯では。そうだと可能だよね」「犯罪の動機となる人の描写が少ない。冷たい」
「なぜ,こんなことを考えたのかしら」
「やりすぎな感じが好き」
「本棚って,重くて立派なものですよね」
「登場人物紹介が意味をなしていない」
「再読で読み返すと,登場人物紹介が意味深なものとなっている。犯人のところにコーテーションマークがついている」
「クイーンにしては随分機械的なトリックを考えた」
「ツッコミどころが多いので,トリックとアリバイが結果的に印象に残る形となった」
「時代を感じる作品」
「白い僧院,オリエント急行,毒蛇が書かれた年で,後世に残る作品が多く出た年と思った」
「犯人は,わざわざ本物かどうかわからない切手を奪わずに,横領をした方が良かったのでは」
「エラリーの傲慢で尊大なところ,事件をゲームとしてしか考えていない軽薄さが,やっぱり嫌い」
「パズルだけの小説にはつきあいたくない」
「謎の魅力は評価できる」
「メインプロットは単純だが,本筋とは関係のない筋で膨らましている。三分の一ぐらいの長さにできるとすっきりしたのではないか」
「タンジェリンが中国切手のことを語っているので,タイトルは中身にリンクしていた。国名シリーズの題名の中では良いと思えた」
等々,盛りだくさんな内容が出てきました。その中でも,密室トリックはわかりにくい,という意見は,ほとんどの人が感じていたようです。そして,「そんなに,嫌いじゃない。わりと面白く読める」等々,(気を遣っていないことを信じて)面白い読書体験だった様子も窺えました。

感想発表の終わりには,お茶会の重鎮,T氏から「プロットについては無理がある。犯人に問いただしたい」とホストへと突然の依頼が入り,いきなり8分半の裁判劇が始まったのでした。ホストはアドリブで答えるはめに。その中から,終盤の名場面と思われるところを,お届けします。(内容をわかりやすくするため一部文言を変えてあります)

T:「犯行場所を別なところにして,例えばホテルで会うようにして,犯行に及ぶと危険は少なかったのではないですか」
ホスト:「それをすると,自分がカーク氏になりすましたときに,X氏(被害者)に疑われるのではないか。それを最小限にするためには,カーク氏の事務所を利用した方が良いのではないかと考えました」
T:「でも,相手は初対面ですよね」
ホスト:「カーク氏は社交界にも出ていたので,写真で知られているかもしれないと思い,事務所を利用することに決めました」
T:「ともあれ,ああいう形でX氏に会って,殺して切手を奪ったわけですよね。そのとき,はじめて,相手が神父でカラーが後ろ前なのに気付いたと。そこで,後ろ前のカラーとネクタイがないことを隠すために部屋の中のすべてのモノを逆向きにした。ふつうの人ならこういう発想は浮かばないと思うんですが,あなたは探偵小説マニアなんですか」
ホスト:「はい」
T:「それで,密室のトリックも考えていたわけですね」
ホスト:「そうです」
T:「ただ,服をすべて逆向きにしてもネクタイがなかったことは隠しようがないのではないですか」
ホスト:「……そのとおりです」
T:「そうすると,カラーの後ろ前を隠すためだけに,あれだけの偽装をしたということになりますね」
ホスト:「はい。本当であればネクタイを取りに行きたかったのですが,取りに行けなくて。あと,伝道師が神父とは知らなかったので,知っていたらネクタイを持ってきていたかもしれません」
T:「あの部屋の中のすべてを逆向きにする。しかも着衣からは,ラベルを切り取る。そういう作業をすべてするのは,なかなか大変だと思いますけども,例えば本がいっぱい詰まったままで本棚を動かせましたか」
ホスト:「一度,本を出してから動かしました」
T:「そうすると,すべての作業をするのに,どれくらいの時間がかかったのですか」
ホスト:「20分でした」
T:「……なるほど。よほど素早く立ち回ったわけですね。作業中,誰か来ませんでしたか」
ホスト:「来ませんでした」
T:「もし、誰か来たらどうするつもりでしたか」
ホスト:「今,でれないと答えます

T:「そうではなく,ドアを開けて入ってきたらです」
ホスト:「両方の扉を閂で閉めていました」
T:「普通の客だったら,それで済んだかもしれませんが,カーク氏が来たら,どうするつもりでしたか」
ホスト:「………………………カーク氏は戻らないと思っていました」
T:「そういう,あやふやな推測をもとに,そんなリスクのある行動を犯すものでしょうか」
ホスト:「犯さないですね」
T:「そもそも,後ろ前のカラーを隠すだけなら,衣類を全部脱がせて,持ち去った方が手っ取り早かったのではないですか」
ホスト:「それが,したかったのですが,クイーンの別の作品でするので,できませんでした」
T:「わかりました。やっぱり,この犯行には無理がありますね」
(Tさんからの,突然の申し出,本当に楽しませていただきました。幸甚の至りです)

 裁判劇後に,ふと「そもそも,後ろ前のカラーを隠すだけなら,衣類を全部脱がせて,持ち去った方が手っ取り早かったのではないですか」の回答が,楽屋落ちみたいなもの以外も,あったことに気付きました。それは,犯人は犯行後,密室に閉じこもるわけですから,衣類を隠す場所に悩んだのではないか。密室もしくは待合室で隠された衣類が見つかると,すぐに自分が疑われてしまうのでは,と考えた末の行動だったのかもしれません。

 また,この裁判で,少ない脳髄を無理矢理しぼってしまい,電池切れの状態になってしまったホストは,Y氏のこの後の質問にとんちんかんな答えをしてしまったこと,その回答をするために,待たせてしまった参加者の皆さんにお詫び申し上げます。(録音を聞くと,本当に忸怩たる思いがしました。Y氏の指摘通りです)
第三幕 (ここからは,未読でも読むことができます)
「ダネイがお気に入り作品の一つとして「チャイナ」を挙げたのはなぜだと思いますか?」という質問でお話をうかがうと,
「頑張って,チャイナと蜜柑を盛り込んだぜ。自分で話を作って,着地させたぜ」
「自分が好きな要素を盛り込んだ。読者のためというよりは,自分のための作品。縛られることなく,自由に書いた」
「自分が書きたいことを,全部書けた」
「やりたいことは,やったんだろうな」
「デビューしてから時間がたち,書けるようになって,遊び心のあふれる作品にできたからではないか」
というご意見をいただけました。自由に楽しみながら創っている様子が,読む側にも伝わったのかもしれません。

第四幕
「あなたがもっとも好きなキャラクターと場面と台詞では」,ジューナの人気が断突でした。
少数意見では,ルイーズ,オズボーン,バーンが出されました。特筆すべきなのは,エラリーが最低最悪だという意見がいくつか出てきたことでした。そして具体的な場面と台詞の回答で多かったのが,マイナスのエラリーでした。エラリーは,たしかにホストである私も,ひどいと思うところは多々あります。ですが,胸を張ってこう言いたい,何も思われないよりは嫌われる方が記憶される。私は,そういう人にあこがれると。(ただし,なりたいというわけではありません)
ルイーズは峰不二子みたいと,同性の方からの意見がありました。オズホーンは,悲哀を感じるところが印象に残ったようです。今作品はキャラクターに対して,あまり思い入れできないという意見もありました。それについては,ボーナストラックのホストのあれこれの中で触れたいと思います。興味のある方は,そちらもご覧ください。ただし,「チャイナ蜜柑の秘密」を未読の方はご遠慮ください。
最後の15分で,EQFCの飯城勇三氏のアンケートと,ホストのあれこれを話して2時間が過ぎ,読書会は終了となりました。ホストは,今回も皆さんのおかげで,濃密な夢の深淵をのぞき見たような充実した時間を過ごすことができ,幸甚であります。
参加された皆さんが,正直な意見を語ってくれたことで,この作品に感じる魅力を再確認できた思いであります。私は,今後もミステリGO! でミステリの深淵に触れて行きたいと思います。
懇親会では,美味しくビールを飲むことができました。そして、今回もミステリの話題ばかり,
とにかく最高でした。
終幕
ボーナストラック
(「チャイナ蜜柑の秘密」のネタバレあり。未読の方は,絶対ここから下は読まないでください。絶対に後悔します。)
今回、読書会でアンケートにご協力していただき,結果が以下のようになりました。
せんだい探偵小説お茶会のアンケート結果

プロット サスペンス 解決 文章 論理性 感動・余韻
参加者 5 7 4 1 4 6
参加者 7 6 6 6 10 6
参加者 6 4 7 8 7 5
参加者 7 6 7 6 7 5
参加者 5 3 6 6 7 3
参加者 5 4 5 9 3
参加者 4 3 7 6 5 2
参加者 7 6 9 6 7.5 5
参加者 7 6 7 7 6 6
参加者 6 5 6 6 5
参加者 8 8 6 8 6 7
ホスト 8 5 8 8 8 9

EQFCのアンケート結果

プロット サスペンス 解決 文章 論理性 感動・余韻
平均点 6.3 5.3 6.8 6.2 6.9 5.2

せんだい探偵小説お茶会のアンケート結果

プロット サスペンス 解決 文章 論理性 感動・余韻
平均点 8.5 7.5 8.7 7.7 8.8 7.0

お茶会の方が,EQFCよりも若干厳しい評価ではありました。お茶会の皆さんだったら,すぐにFCに入会できそうてすね。「エジプト」のお茶会評価は,参考で掲載しました。

飯城勇三氏のアンケート回答(Queendom89より抜粋)
01.「初読」の感想
「あべこべ」に結びつけるエラリーの推理にわくわくした。(略)
02「再読」の感想
再読するたびに評価は低くなる。(略)しかし,何度再読しても,相変わらず,「妙に面白い」。なぜだろう。(略)
03.「チャイナ蜜柑の秘密」を以下の点から評価してください。(各項目10点満点。10点の基準はこれまで読んで来たミステリ作品で,10点と思えるものと比較して点数をつけてください。)
プロット=(6),サスペンス=(5),解決=(7),文章=(7),パズル性(論理性)=(8),感動・余韻=(5)
04.あなたがもっとも好きな(印象深い)キャラクターと場面と台詞
キャラ:ジェームズ・オズボーン
アイドルが自分を見て微笑んだだけで「彼女は俺に惚れているんだ」と勘違いしてストーカーをするオタク的な人物に思えた。
場面=(エラリーとアイリン・リューズの対決シーン)
「青年探偵と美貌の女犯罪者の対決」というのは,実にわくわくする。
台詞=(ラストのテンプル嬢のセリフ)
我々読者は,以前の作品で「意味がなさそうなものに意味を見いだす」エラリーの姿を何度も見ているのだから,「なにもありません。あの男はおなかがすいていたのだという以外」は,ないですよね。ひよっとして,これもまた,「あべこべ」なのだろうか。「あべこべの密室」,「あべこべの手掛かり」,そして「(いつもと違う)あべこべの推理」。作中人物にこんなツッコミをさせるということは,クイーンは確信犯だったに違いない。
05.ダネイがお気に入り作品の一つとして「チャイナ」を挙げたのはなぜだと思いますか?
「チャイナ」に見られる変なところは,間違いなくダネイの発想だろう。しかしリーはこういう発想はあまり好んでいなかったらしい。つまり,ダネイが本作品を気に入っているのはリーの抵抗に打ち勝って自分の好みを前面的に押し出せたから。では,なぜリーが一歩引いたかというと,「シャム」での「山火事が迫る中での殺人」というアイデアと全編に漂う緊張感,双子の少年の魅力的な描写から,ダイイングメッセージのアイデア以外をリーが主導権を握って書き進めたからと思える。マンネリ打破のため二人がそれぞれ自分の好みを全面的に押し出した作品が「シャム」と「チャイナ」だったのかもしれない。(「災厄の町」と「靴に棲む老婆」もそうかもしれない。)

ホストのあれこれ
01.「チャイナ蜜柑の秘密」を読んだ感想
○今回の読書会に向けて3回読了。計5回目読了。これまでのエラリーの活躍はヒーロー的に思えていましたが,本作品では道化師のようなイメージに。小栗虫太郎の法水麟太郎ものや,アントニー・バークリーのシェリンガムものを思い出しました。個人的には暴走する推理が好きなので,本作品のエラリーの暴走ぶりに興奮しました(符号に対する執着と推理。そして窃盗と不法侵入)。初読時は密室の意味や推理に感心して面白く読んだ記憶があります。ただ,再読してみるとおかしなところが多々見られるようになりました。しかし,Queendom「チャイナ」特集と法月綸太郎氏の「笠井潔論(大量死と密室)」を繙くと,本作品の違った魅力がいくつも見えてきました。
飯城さんの「妙に面白い」という感想には,同感であります。
○違った魅力とは何なのか? 本格ミステリとしての瑕疵は置いといて,作家としてのクイーンの変遷をたどる上で本作品は,ターニングポイントになっていることがQueendom「チャイナ」特集から読み取ることができました。クイーンはルイス・キャロルが好きで,その嚆矢となったのが本作品で有り,「アリス」三部作,「チャイナ」「キ印ぞろいのお茶会」「神の灯」が作られたと考えられています。「チャイナ」に瑕疵があった分,「キ印」「神」と改善されていく様子もわかります。「チャイナ」は長編向きではなかっただろうという意見もあり,クイーン自身それを感じて,アリス三部作の後ろの2作を短,中編としたのかもしれません。その三部作を順に追って読むと,かなり面白いです。是非!(※1参照)
また,ライツヴィル作品以後の作品で見られるエラリーの暴走推理(奇妙な論理)の片鱗がここから始まったとも思われます。
○違った魅力その2。笠井潔はミステリが生まれた理由として,「人類が初めて体験した大量殺戮戦争である第一次大戦と,その結果として生じた膨大な屍体の山が,ポーによるミステリー詩学による極端化をもたらしたのである。戦場の現代的な大量死の体験は,もはや過去のものかもしれない尊厳ある,固有の人間の死を,フィクションとして復権させるように強いた。
機関銃や毒ガスで大量殺戮され,血みどろの肉屑と化した塹壕の死者に比較して,本格ミステリーの死者は,二重の光輪に飾られた選ばれた死者である。犯人による,巧緻をきわめた犯行計画という第一の光輪,それを解明する探偵の,精緻きわまりない推理という第二の光輪。第一次大戦後の読者が本格ミステリーを熱狂的に歓迎したのは,現代的な匿名な死の必然性に,それが虚構的にせよ渾身の力で抵抗していたからではないか。」(「新本格」派に若者の支持/朝日新聞92年9月1日付夕刊)と語り,この時代に生まれたミステリを「大戦間探偵小説」と論じています。この「大戦間探偵小説」とは「長編本格推理の黄金時代」(※2参照 ヴァン・ダイン「探偵小説ゲーム論」や「フェアプレイの原則」で象徴した「謎-論理的解明」を基本構造とする形式主義的な探偵小説)のことと考えると法月綸太郎は補足しています。そして,法月は自身の評論「大量死と密室」の中で,「チャイナ」が「大戦間探偵小説」の時代に有りながらも,「大戦間探偵小説」に疑問を感じて「無名の被害者」と「トリック成立のために死体をモノ化してあつかう」ことを行い,「大戦間探偵小説」を超えた荒涼とした光景を見せ,ミステリを新たな地点へと向かわせたのではないかと語っています。クイーンファンとして鼻息荒く首肯してしまいます。また,他の登場人物の記号化も他作品を凌駕しているとも思われました。
○初読が創元推理文庫版で,その見開き紹介文も,とても魅力的だったことを覚えています。ですが,これは密室大集合のアンケート結果とともに「むっ」とうなってしまうところがありました。以下紹介文。
「宝石と切手収集家として著名な出版業者の待合室で,身元不明の男が殺されていた。しかも驚くべきことには,被害者の着衣をはじめ,その部屋の家具も何もかも,動かせるものすべて”さかさま”にひっくり返してあった。この”あべこべ”殺人の意味は何を意味するのか? 犯人はなんの必要があって,すべてのものをあべこべにしたのだろう? ニューヨーク・タイムズはクイーン最大の傑作と激賞したが,事実,国名シリーズの中でも卓抜した密室殺人事件として,特異の地位を占める名作である。」
事務室,待合室が死体によって「密室」を作られたことがわかると犯人がわかる仕組みになっているので,この紹介文とアンケートはいかがなものかと思っていました。ですがQueendomと法月の評論から,「チャイナ」の密室は,これまでの密室を扱った作品とは違って,犯人を閉じ込めるもので,作品とリンクした「あべこべの密室」と思えるようになりました。「チャイナ」そのものが,ミステリに対して”あべこべ”を提示し,ミステリを次の段階,より深淵へと導くマイルストーンの一つだったのかもしれません。

02.「チャイナ蜜柑の秘密」の点数。
プロット=(8)「魅力的な謎の提示を評価してです」,サスペンス=(5)「ちょっとつかみどころのないユーモアの方が横溢していたので。ルイス・キャロルの「アリス」シリーズを意識指定のでしょうかね。」,解決=(8),文章=(8),パズル性(論理性)=(8),感動・余韻=(9)「作品だけではなく,Queendom「チャイナ」特集と法月綸太郎「大量死と密室」も繙いた感銘から。」

03.あなたがもっとも好きなキャラクターと場面と台詞
キャラ:フェリックス・バーン「最近,嫌われる人物の行動について興味があり,つい魅力を感じてしまいます。でも,対した役どころではなかったですね。やっぱり暴走推理するエラリーですかね。」
場面=P324~P330。「読者への挑戦まえはワクワクしてしまいます。そしてロバート・ブラウニングの詩が入ってきたことにも。」
台詞=「あの蜜柑色の切手のことですよ。実のところ,あまりに魅力あふれる偶然の一致なので,いつかぼくが哀れなオズボーンと優しい顔の中国の伝道師の事件を小説化することになったら,”チャイナ蜜柑の秘密”という題名をつける誘惑に勝てそうもありません!」(これまで,題名に冠された手掛かりには,必ず意味を持たせてきたクイーンが,(本の主題,あべこべを意識して? )意味を持たせず,ただ題名につなげるエピソードにしたので,この台詞を選びました。)
04.ダネイがお気に入り作品の一つとして「チャイナ」を挙げたのはなぜだと思いますか?
○「なんて,ぼくは,すごい謎と解決を思いついたんだろう。そして,あべこべで全てやり遂げれば,これまでの形式化されたミステリを変え,新しいミステリを作れるかもしれないぞ」と思い、実際そうできたからではないでしょうか。ちなみにダネイの自選ベストは「チャイナ蜜柑の秘密」「中途の家」「災厄の町」「九尾の猫」「キ印ぞろいのお茶会」「エイブラハム・リンカンの鍵」です。(法月綸太郎の「大量死と密室」の中では「九尾の猫」についても触れられています。この作品とのつながりの評論も面白い! 読みたい方は,本書とエラリー・クイーン「九尾の猫」,笠井潔「矢吹駆シリーズ」,G・K・チェスタトン「折れた剣」,アガサ・クリスティー「ABC殺人事件」,S・S・ヴァン・ダイン「僧正殺人事件」を読んでからじゃないと後悔します。)

○ちなみにEQFCでのアンケートの平均点は,(2010/2~6)以下のようでありました。

プロット サスペンス 解決 文章 論理性 感動・余韻
参加者 6.7 5.6 6.5 6.2 6.9 5.6

(※1参照)
「キ印ぞろいのお茶会」『江戸川乱歩編世界短編傑作集4』創元推理文庫に収録。
「いかれ帽子屋のお茶会」『世界の名探偵コレクション』集英社文庫に収録。
「マッド・ティー・パーティー」『神の灯』嶋中文庫に収録。
「神の灯」『エラリー・クイーンの新冒険』創元推理文庫に収録。
「神の灯」『神の灯』嶋中文庫に収録。
(※2参照)
小説世界から社会的主題や人間の内面的な位相を消去することで、フェアで知的な論理ゲーム空間を構築することにあった。「項」と「項」を論理的に組み合わせて作る論理式のような作品こそが目指すべき理想像と考えられていました。

余談
○クイーンはルイス・キャロルだけではなく,ルーシー・モード・モンゴメリも読んでいてプラウニングの詩を引用したのではないかと思われます。なぜなら,エラリーのヒロインとして登場する女性は,赤毛である場合が多く見られるからです。(ニッキー・ポーターは作品によって髪の色が赤毛であったり、とび色であったり、ブロンドになったりしています。長編では赤なのでモンゴメリ作品の主人公のイメージがあって,それが投影された可能性が,あるのではないでしょうか。)
○前回の読書会でも触れていますが,今回もあえて触れさせていただきます。映画監督のデヴィット・リンチがクイーン作品の影響を受けていると妄想しています。今回の「チャイナ」は,リンチ作品の「ツイン・ピークス」とリンクする部分が多くあるように思いました。それは,「暴走推理の探偵」「あべこべの部屋(ブラック・ロッジとホワイト・ロッジ)」「奇妙な人々の事件と,関係ありそうでなさそうなエピソード」等です。物語の根幹をなす部分なのですから,たった3つじゃないかとは,言わないでくださいね。2017には,「ツイン・ピークス」の新シリーズが始まります。興味のある方は是非ご覧いただければと思います。(本当に毎回,デヴィット・リンチについて,しつこくてすみません。)

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28th event

 

第28回 せんだい探偵小説お茶会主催

皆川博子『死の泉』読書会

せんだい探偵小説お茶会では、9月17日(土)に第28回読書会を開催します。今回の課題本は皆川博子の『死の泉』です。

今回は国内ミステリーが課題本となります。

参加条件などは全くございませんので、少しでも興味がございましたら、気軽にご参加いただけると嬉しいです。

 

死の泉

 

今回の課題図書は、第18回の読書会で取り上げられ、参加いただいた皆様からご好評をいただいた、皆川博子先生の作品を再度取り上げることとなりました。
と、前回の『開かせていただき光栄です』の続編となる『アルモニカ・ディアボリカ』かと思いきや、今回は趣向を変え、『死の泉』です。
吉川英治文学賞受賞の大作を是非この機会に。

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■日程:2016年 9月17日 15時30分~17時30分(途中退室可)

■会場:戦災復興記念館 第3和室
(青葉区大町2丁目12番1号)

■参加費:一般 500円、学生 無料(会場費、諸経費等)

■持物:皆川博子『死の泉』(ハヤカワ文庫)

※各自で必要に応じて飲み物をご持参ください。(会場内に飲み物の準備はございません)

■申し込み:氏名・連絡先を明記のうえ、sendai.mystery@gmail.comまでご連絡いただくか、Twitterにて@sendaimysteryまでリプライまたはDMを送ってください。

※携帯メールは受信できない場合があるようです。主催者側から返信の無い場合は、お手数ですがPCメールで再度ご連絡ください。

これまでの読書会でも、様々な年代・性別の方にご参加いただいております。ぜひ気軽にご参加ください。

また読書会終了後には懇親会を予定しておりますので、お時間のご都合がつく方は、こちらにもぜひご参加頂ければと思います。

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25th report

第25回 せんだい探偵小説お茶会主催

カーター・ディクスン『白い僧院の殺人』

読書会レポート

執筆者:73番目の密室

杜の都を覆う満開の桜もその花弁を徐々に散らしはじめ、葉桜へと変貌を遂げつつある4月中旬の土曜日。もはや我が会ではお馴染となった戦災復興記念館の一室において、第25回せんだい探偵小説お茶会が催されました。

この度の課題書は黄金期の巨匠ディクスン・カーによる『白い僧院の殺人』(本書の執筆に際してはカーター・ディクスン名義を使用)。“雪の密室”を扱った古典的佳作です。この課題書と軌を一にするようにこの日は季節外れの猛吹雪に……見舞われることもなく(笑)、穏やかな気候の下絶好の読書会日和となりました。些か時期を失した感は免れませんが、ここはひとつ舞う花弁が雪の代役を果たしてくれたということでご勘弁を願いたく思います……我ながら苦しいのは承知しております、はい。

この度の読書会の参加人数は15名。宮城、山形、福島からお集まりいただいたのに加えてサプライズ、なんと別件で仙台を訪れていた札幌読書会の世話人Aさんが急きょ足をお運びくださり、1道3県にまたがる参加者を迎えての堂々たる盛会と相成りました! かねてより我が読書会ではクイーンの課題書は(主にある1人のメンバーの瞠目すべき熱意により)頻繁に扱う一方、昨年暮れまでカーは一度も取り上げられたことはなく、会中のカー派は内心密かに「ぐぬぬぬ」と切歯扼腕して……いたかはともかく(笑)、この不遇の時を経て昨年の12月には遂に初のカー作品『ユダの窓』読書会が開催され、更に時を置かずして今回に及びこの盛況ぶり。「やはりカーこそミステリの帝王! すわ下剋上の刻来れり、いざいざ!」と内心カー好きの私が増長してしまったのもむべなるかなと存じますが(何故時代小説調?)、これが愚かな早合点であることに気づくのにさして時間は要さなかったのであります……。

さて、まずはレジュメとメンバーの方々に持ち寄っていただいたお菓子が配られる処から始まるのは我が会の恒例ですが、今回持ち寄られたお菓子はAさんがご持参くださった札幌銘菓「白い恋人」はじめ、判で押したようにホワイトチョコ系ばかりという結果に(笑)。“雪”の密室を扱った作品で序盤に毒入りチョコレートが送られる事件まで発生するとなれば、やはり皆さん考え付く処は同じだったようです。他人ごとのように書いていますが、ホストが持参したお菓子もご多分に漏れずアンテナショップで購入した北海道産ホワイトチョコでありました。商品が誰ともバッティングしなかった時は心底ホッとしたものです。
そんな中、一際異彩を放ったお菓子はご自身大のカー・ファンでもあられる福島読書会世話人・諸葛亮証明さんがお持ちくださった二本松銘菓・御菓子処日夏の最中。日夏(H)の最中(M)ということで、H・M卿が活躍する本書にちなんだお菓子としてお持ちくださったとのこと。この諸葛亮さんの説明に、同じくカーに一家言を持たれる我が読書会重鎮Tさんは「うーん」と首を傾げておられました(笑)。ああ、さっそくカー派の結束が崩れていく……。

そんなこんなでお菓子とレジュメも行き渡り、各々の自己紹介へ。名前、好きな作家、最近読んで印象に残った本、等々。そして“カー作品についてどう思うか?”という質問にも答えていただきました。普段の読書会においては、課題書の作家の作品を「(読書会の為に)初めて読んだ」「課題書しか読んだことない」という参加者の方が何人かいる場合が殆どなのですが、今回に関しては参加メンバー全員が事前に何らかの形でカー作品に触れたことがあるとのことで、(賛否は分かれましたが)1人も余すことなくカーへの印象を述べていただけました。古典が読まれなくなったと叫ばれて久しい昨今にあって尚これだけの既読率。やはりミステリファンの間でカーは依然避けて通れない作家なんだなあ、とその存在感を改めて実感させられた気がしました。思えばここが今読書会におけるカー評価のピークだったかもしれません。

そうした自己紹介も終わり、いよいよ課題書の感想を1人ずつ述べていただく段となりました。
以下、発表された感想を羅列しますと、

「合わなかった」
「(キャラクターが)誰が誰だか区別がつかなかった」
「長すぎる、もう少し短くまとめてほしかった」
「読みづらくて読了までに時間がかかった」
「文章が(読みづらくて)頭に入ってこなかった」
「H・M卿登場までが退屈でツラい」
「論理的だがクイーンならもっと上手く書ける」(どなたのご発言かは記すまでもありませんね・笑)
「建物の構造やキャラクターの動きなどが分かりづらく、状況を理解するのが大変」
「リアリティがない」

等々……もう、惨憺たるものです(苦笑)。ホストとしては「かつてここまで不評が噴出する課題書があっただろうか……」と、思わず遠い目になりかけました。
とりわけ「読みにくい」「中盤が退屈」という2つの感想が多く、カーマニアの方々含めほぼ全員が述べていたのではと思います……確かにホストも読書会に備えて読み返した際、「あれ、こんなに中盤読みにくい作品だったっけ……?」と面喰ったものでしたが(笑)。この件に関しては「(解決までの)話に起伏がなく平板で、キャラにも面白味がないから」「カー得意のオカルト要素がないから」などの分析が寄せられました。また「カーだから読みにくいのは仕方ない!」という擁護(?)の声も。

唯そんな中にあってやはりメイントリックそのものへの評価は高く、「この時代としては斬新!」「トリックによって状況がひっくり返されたのは感心」といった好意的な感想が多く挙がりました。またカーは全作読んでおられるというAさんからは「カーは長編では全部で5つの足跡トリックをものしているが、その中で最も綺麗に決まっている」とのご意見もいただきました(一方で「(トリックが)行き当たりばったりだ!」という声や「このトリックが実行されたなら現場に○○が残ってないのはおかしい」といった矛盾点への言及もありました)。
更に探偵役であるH・M卿の破天荒なキャラクターは大変好評で、「H・M卿が登場してから一気に頁が進みだした!」と言う意見が大勢を占める結果に。これと併せて「もっとはやく登場してほしかった!」という声も(笑)。無味乾燥な物語の中にあって一服の清涼剤ともいえるユーモラスさが人気の理由なのか、ともかく卿のファンであるホストとしてもこの好評ぶりは望外の喜びとなりました。

上記のような幾何かのフォローはあったものの、殆どの方の本書の総合的な評価は「合わなかった」か「普通」というものでした。序盤から不評続きの流れは一向に変わらず、途中「普通だった」という感想が立て続けに起こった時は、それでホストが「盛り返してまいりました!」と実況してしまった程(笑)。カーを制覇ないしはほぼ制覇しておられるという重鎮の方々まで評価が芳しくなく「普通」止まりで、これは課題書を選定した私の責任問題に発展しやしないかと内心冷汗ものでしたが……。
そんな中、唯一肯定的な声を挙げてくださったのが感想発表のトリを飾られた諸葛亮さん。それまでの不評の流れを一掃せんばかりに「(初読時に)読み終わって「あっ!」って声を挙げた初めての作品」「作中の状況を成立させる為に要素を重ねるに重ねたカーの手腕はすごい!」「この解決は美しい(某ドラマの決め台詞風)」と絶賛の嵐。更には(日本人キャストで)実写化する際のキャストまで考えてくださり、マーシャ・テート=藤原紀香、H・M=西田敏行……これ以降はネタバレになるのでオフレコとのことです(笑)。氏が『白い僧院の殺人』のファンということは以前から窺っておりましたが、その言を裏打ちしてあまりある、本書へ注ぐ愛情の深さがひしひしと伝わってくる熱弁でした。ホストも1ファンとして拝聴して感激するとともに、「否定的意見だけで終わらなかったー!」と密かに胸を撫で下ろしました(笑)。

一通り感想を述べあった後は作品に関する四方山話。作中の事件が60年代に現実に起こったシャロン・テート事件を連想させるという意見や(もちろん現実の事件の方が後で小説のモデルということはありません)、「原文が古臭いので訳には工夫が必要では?」といった提言も発信され、尚活発な話し合いは続きました。

ここで話は前後しますが、実は感想発表の際各参加者の方に「本作以外でおすすめの“足跡のない密室”を扱った作品はありますか?」という質問をホストから投げかけていました。この回答の中で複数人が挙げたのは(以下著者の敬称略)チェスタトン「翼ある剣」、横溝正史『本陣殺人事件』、有栖川有栖「人喰いの滝」、そしてカー(カーター・ディクスン)の『貴婦人として死す』といった顔ぶれ。特に「翼ある剣」と『本陣殺人事件』の人気は高く、さすが東西両巨匠の面目躍如といったところでしょうか。他に登場した名前は島田荘司『斜め屋敷の犯罪』、高木彬光『白雪姫』、フレドリック・ブラウン「笑う肉屋」、麻耶雄嵩『夏と冬の奏鳴曲』等々。まだ読んだことのない作品も多数紹介していただき、密室中毒のホストはホクホクでした(笑)。皆さんありがとうございました!

そうこうするうちに時間となり、無事閉会。今回皆さんの感想を拝聴して思ったのは、「やはり見事なトリックだけでは読者の心は掴めないんだなあ」ということ。『白い僧院~』のトリックに関しても概ね好評だったかと思いますが、それでもその周囲を彩る物語が平板だった為に作品全体としては不評が大勢を占める結果に落ち着いたように見受けられます。私はどちらかというと(ミステリに関しては)“トリックさえ良ければ後はおまけ”と考えてしまう傾向のある人間なので、ミステリにも様々な見方があって奥行が深いものであることを改めて教えられ、眼を開かれた心持ちがしました(逆にトリックしか視てないからこれまで他の方々には好評な課題書でも1人だけ不平満々だったりしたのかな、と我が身を振り返って視野の狭さを反省してみたり・笑)。

ただ課題書は不評極まれりだったものの(苦笑)、それで会の雰囲気が悪かったかというと決してそんなことはなく、終始和やかなムードで楽しくお話ができたのではと思います。やはり「本を読んで大勢で意見を交わし合う」という行為そのものが(普段中々機会のないことでもあり)とても魅力的なものであって、だからこそ読書会という場にこれだけ多くの方が集ってくれるのでしょう……と、これは会後の懇親会で諸葛亮さんが仰られたことの受け売りですが(笑)。課題書の内容如何でその楽しさが減じることは些かもないのだということを今回改めて実感するとともに、読書会という“空間”の貴重さを再認識させていただきました。決して課題書選定の責任逃れをしているわけではありませんので、ご理解いただきたく。

素晴らしい時間を共につくりあげてくださった皆さんに感謝の意を伝えつつ、今回は筆をおかせていただきます。
余談ですが次回の我が会の課題書が『葉桜の季節に君を想うということ』なのですが、葉桜に言及した冒頭を書いたのはその情報を聞く前のことで、予期せぬ仄めかしになってしまったことに自分でもちょっと驚いています(笑)。もちろん冒頭を書いている時に彼の作品が頭を過っていたのは言うまでもありません。

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