せんだい探偵小説お茶会

Sendai Reading-Party of Mystery

18th Report

第18回 せんだい探偵小説お茶会主催

皆川博子『開かせていただき光栄です―DILATED TO MEET YOU―』

読書会レポート

執筆者:マダム・リー

 定禅寺通の欅並木が日に日に色を深める、仙台が一番美しくなる時期の日曜日の午後。第18回せんだい探偵小説お茶会が開催されました。商業ビルの上階に上り、ぐるりと廊下を進んだ奥の和室に集まった参加者は10名。今回初参加の方はいらっしゃいませんが、初顔合わせはあり。みなさまに持ち寄っていただいたお菓子を並べて(開いて、開いて開いてお菓子本体が登場するネタ仕込みあり、課題書にちなんだもの・課題書とは関係ないものあり)和やかな開始前のひとときです。

課題書は皆川博子氏の『開かせていただき光栄です−DILATED TO MEET YOU−』。第12回の本格ミステリ大賞受賞作です。著者の皆川氏は、誠に多岐に渡り精力的にご執筆なさっておられる方。でも、実は初読!何故か手にしていなかった!という声が多数。課題書でなければ絶対に読むことがなかった、という方もいらして、嬉しくなりました。狙い通りです、ふふふ。なんとなく後回しにしていた、一読歓喜して著者の経歴を見たら年齢に驚愕!との声も。『死の泉』とはまた違って明るく読みやすい、細部まで練って作られている、などの感想も聞かれました。

読んでみていかがでしたか?と伺ってみると、まず名前が覚えられない!との声が複数。翻訳物はそれが理由で敬遠しがちなので、今回は日本の作家さんだからよし、と思って読んでみたらなんとなんと…!と嘆かれた方もいらして、いやほんとすみませんでした。かく言うホストも、実は本書は過去一度挫折。いきなり通称で骨皮(スキニー)・アル、とか言われてもうなんか苦手かも、と思ったから。容姿端麗とか天才画家とか、あんまりよく知らないけど『ポーの一族』っぽいイメージでした。

その『ポーの一族』を連想された方、他にもいらっしゃいました。うまく入り込めなかったけれど、そのイメージを借りてのめり込めた。あるいはそのイメージでますます苦手な感じになり苦労した、男同士の距離感がおかしい=近すぎる、などなど。バートンズのパートはなんだか今ひとつだったけれど、詩人志望のネイサン少年が登場してから共感して読み進められるようになったとのお話しもありました。

さて、舞台は18世紀末のロンドン。猥雑さと熱気が入り交じるその時代の街の様子は、ライトな読み味の本書からはあまり感じられないとのご意見が複数。時代考証に散見される齟齬はともかく(しっかりと例示してご説明いただきました。いつも本当にありがとうございます)、箱庭的な描写にとどまっているのは意図的なのか否か。時代ミステリなのだけれど、登場人物の行動や発言は現代的で時代性が感じられない。気になるネタや人物が満載なのだけれど、すっきり読める反面、もうひとつ食い足りない感じがするといった発言がたくさん出てきて、改めて気づくことや考えてみたいことがどんどん増えました。

本書は続編『アルモニカ・ディアボリカ』もハヤカワ・ミステリワールドから刊行されています。どんな続編になっているの?あの人出てくるのかな?気になる展開ですが、もう何を言ってもネタバレになってしまうので、興味のある方はぜひ!というところでお開きに。展開予想が見事にはずれていましたとの発言や、自身が読んでいる本たちがリンクしていくことにも夢中になってしまう、こんな本とも共通する点があるよ、などなど、今回も興味深いお話を沢山伺うことができました。お会いできた皆様と、これからお会いする皆様のミステリ愛に乾杯。また読みたい本が増えたので、せっせと読んでいきたいと思います。本当にありがとうございました。

———————————————————–

ちなみに、福島読書会の世話人から焚き付けられ、作品にちなんだお土産を、ということで仙台の世話人が用意したのものは『外郎(ういろう)』でした。
作品中で、墓暴きに対して「この、下郎(げろう)が」というような台詞があったと記憶していて、その下郎にかけて、外郎を用意してみました。(ちなみに、そんな台詞が果たしてあったかどうかは確認していません!)
お後がよろしいようで。

さて、月替わりで、国内ミステリーと翻訳ミステリーを交互に課題本に掲げている当読書会。
次回は、ドン・ウィンズロウ『ストリート・キッズ』を6月14日に予定しています。
詳細は近日HPにて公開予定です。


Comments are closed.

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です