せんだい探偵小説お茶会

Sendai Reading-Party of Mystery

月別: 2020年3月

56th event

第56回 せんだい探偵小説お茶会主催

アンソニー・ホロヴィッツ『メインテーマは殺人』読書会

せんだい探偵小説お茶会では、2020年4月19日(日)に第56回読書会を開催します。今回の課題本はアンソニー・ホロヴィッツ「メインテーマは殺人」です。

 

まずはホストからの紹介文をどうぞ。


 

コロナウイルスの終息が見えない不安な時期ではありますが、こんな時だからこそミステリを読んで、知的興奮で世のことを忘れましょう!

そして、4月の読書会の開催される頃には、ミステリの解決で大団円を迎えるように元の生活に戻っている事を願いましょう!!

その読書会での課題書は?

第1位『このミステリーがすごい! 2020年版』海外編
第1位〈週刊文春〉2019ミステリーベスト10 海外部門
第1位『2020本格ミステリ・ベスト10』海外篇
第1位〈ハヤカワ・ミステリマガジン〉ミステリが読みたい! 海外篇

快挙! 2年連続ミステリランキング全制覇の「メインテーマは殺人」アンソニー・ホロヴィッツ著  山田蘭訳(東京創元社)です!!!

「謎解きの魅力全開の犯人当てミステリ」という惹句とランキングの件、昨年の本読書会で話題騒然となった「カササギ殺人事件』に並ぶ傑作と噂の1冊!

今回も、そんな話題作を課題書に選んでみました。

読んだ人も、まだ読んでいない人も、素晴らしい春の訪れを、ミステリの読書会とともに迎えてみませんか?


■日程:2020年4月19日(日)15時30分~17時30分(途中退室可)

■会場:トークネットホール仙台(仙台市民会館/第2会議室)
〒980-0823宮城県仙台市青葉区桜ヶ岡公園4-1 TEL022-262-4721

■参加費:一般 500円、学生 無料(会場費、諸経費等)

■持物:「メインテーマは殺人」アンソニー・ホロヴィッツ著  山田蘭訳(東京創元社)

※定員は先着順で17名(ホストを入れて18名)とさせていただきます。

※各自で必要に応じて飲み物をご持参ください。

■申し込み:氏名・連絡先を明記のうえ、sendai.mystery@gmail.comまでご連絡
ください。なおメールの件名に『メインテーマは殺人読書会参加希』とご記載ください。

※参加申し込み頂きました方へは、主催者側から受付完了のお知らせメールを返信いたします。

※体調不良等の場合はキャンセルいただいても問題ございません。その場合はメールにてご連絡いただけますようお願いいたします。

これまでの読書会でも、様々な年代・性別の方にご参加いただいております。ぜひ気軽にご参加ください。

また読書会終了後には懇親会を予定しておりますので、お時間のご都合がつく方は、こちらにもぜひご参加頂ければと思います。

53rd report

第53回 せんだい探偵小説お茶会主催

「アメリカ銃の秘密」読書会レポート

文責 クイーン・ファン

第一幕

おかげさまで,せんだい探偵小説お茶会の7年目を終えようとしている2019年の暮れ,エラリー・クイーン祭りが満員御礼で無事開催されました。この場をお借りして,ご協力を賜った飯城勇三氏とご参加(メールでの参加)いただいた皆様に心より御礼申し上げます。

さて,本題に入って。前々回の「スペイン岬の秘密」,前回の「シャム双子の秘密」と同様に,エラリー・クイーンファンクラブ以外のミステリランキングに取り上げられたことのない作品であります。1983EQFC(エラリー・クイーンファンクラブ)国名シリーズ+1アンケート11位(最下位),1997EQFC全長編アンケート17位,2014EQFC国名シリーズ+2アンケート10位と,「スペイン岬の秘密」「シャム双子の秘密」よりも評価が低い作品でありますが,本作品も魅力的な作品であることは間違いありません。本作品も魅力的な作品であることは間違いありません。会場に集った13名は,どのようなことをお話ししたのか? そしてアンケート結果の行方は? それでは,はじまり,はじまり!(出てくるページ数はすべて角川新訳版対象となります)

 

第二幕

毎回,クイーン読書会では,作品にちなんだお菓子が出てきます。前回の読書会では,探偵が菓子を食べる場面が見つけられなかったので,ホストの菓子選びは,お茶を濁すようなセレクトになってしまいました。そこで次回の読書会では探偵が菓子を食べている場面に出会えることを祈念していると,今回はありました!本書「アメリカ銃の秘密」(角川版エラリ-・クイーン著・ 訳・越前敏弥・国弘喜美代)408ページに! ホストからは,その本作品に出てきた「ブリオッシュ」を提供しました。実は,ホストはしばらく冷凍保存したあとに,レンジで温めて食べてみましたら,なかなかの美味で,味わいながら読書会の至福の時間を思い出しました。 閑話休題。

さて,自己紹介を終えて読書会は本書の内容へと。参加者の感想は以下のようなものでした。

「精密化したパズル」

「手掛かりの描写の仕方をどうしているか注意して読み,さすがにうまいものだなあと感じました」

「サイレントからトーキーへの移り変わりが発端ともいえる点が,横溝作品を思い出す」

「ストーリーはとてもシンプル。謎が少ないのでもっと短くできるかも」

「○○と○○が,○○という記述があれば高評価。作者は犯人を当てさせる気があったのでしょうか? ただ面白い! 結果的には満足!」

「面白かったのですが,最後の終わりがなんともすっきりしない感じなのが残念」

「エラリーって,文章から香り立つほど魅力的だったかしら・・・。犯人が明らかになった時には頭が真っ白!」

「ここまで大盤振る舞いの内容であったかと驚愕した。論理の詰め方に瑕疵が少なく徹底している」

「感心させられたが,そこに一定のリアリティがないと『意外な推理』も納得性がない。人間心理も加味した合理的な謎解きという点で,上位の国名シリーズより見劣りする」

「再読なのに,すっかり真相を忘れていた。○○○○○トリックにビックリ」

「銃を装飾している時代が好きなので,それだけでとても満足」

今回は,メールでの感想もいただきました。その中からピックアップをいくつか。

「○○の隠し場所は中々の盲点で上手いと思います」

「クイーンよりもカーの作風に近い印象を受けました。衆人監視の中の殺人,どこにも見つからない凶器,そして理路整然と無理矢理な解決編…どれも大変カーが好みそうです。よって私も好みです(笑)」

 

感想と重なる部分もありますが,美点として挙げられたのは,

「パズルにかけるいさぎよさ」

「論理の積み重ねだけでひっくり返してしまう。こういうのを論理のアクロバットというのだろう(論理と意外性の両立)」

「隠し場所とありえそうなトリック」

「アメリカ的な素材がふんだんにちりばめられている」

「○○は奇跡だったという台詞から逆説的に○○○○○トリックを作ったところはブラウン神父を意識してかな」

「ジューナがかわいい」こと等々でした。

 

疑問点や気になる点としては,

「動機と行動に整合性が見られない。だからすっきりしない終わり方」

「○○が熱を持っているのに○○できたのか?」

「ボクシングシーンはいらなかったのではないか(マディソンスクエアガーデンとわからせるため?)」

「銃の名手といえども犯行方法にリアリティが感じられない」

「手掛かりのところからも○○○○〇トリックはすぐ見破られるのでは。無理があるのではないか?」

「2万人の観客を閉じ込めるのはありえない」

「本書83Pの図からも殺害時の記録写真が正面から撮られているはずなのに,245Pの記述ではコーナーで遠心力がかかっている状況を正面から撮ったと記述されている。コーナーは明らかに正面から撮影できない」

「犯人が○○もせずに○○してしまった」

「手でひねって壊れる金庫は,如何なものか? 文章からイメージするのが難しかった」

「○○に,いつそんな練習をしていたのか?」

「ブラウン神父の名前を出したことに,もう少しリスペクトしてほしかった」等々があがりました。

 

第三幕

好きなキャラクターや台詞,場面についてもお話をうかがいました。

キャラクターは,

「カービー少佐」仕事ができる。簡単に協力する。連続射撃のスゴ技。

「クイーン警視」息子思い。

「ジューナ」やっぱりかわいい。

「ヴェリー部長」エラリーの対極にいる感じに好感。

場面は,

サイレントからトーキーへ移る時代を感じさせる。

ジューナの紹介からコロシアムへの入場。

エラリーが映像の編集を知らないシーン。

ヴェリーの「よくしゃべりますね」でエラリーが沈黙。

弾道推理のシーン

二度目の殺人(やっちまった。これで犯人はつかまるな)

451Pの惨劇を思い出すシーン。

台詞は,

「おたふくかぜにかかった,ケンタッキーの山男みたいだ」(いなかっぺという意味かも)273P。

エラリーの247P,248P,386P,406P,408P。

クイーン警視の「いいから口を閉じてろ!」から。80P。等々がでてきました。

 

第四幕

今回も参加者の方々にアンケートのご協力をいただきました。計13名の方々,ご協力ありがとうございました。(それぞれ10点満点です)

一昨年の「シャム双子の秘密」せんだい探偵小説お茶会アンケートの平均点が以下のような結果でした。

 

プロット サスペンス 解決 文章 論理性 感動・余韻
平均点 6.8 7.5 5.8 6.8 6.6 7.3

 

はたして,クイーンファンクラブの国名シリーズアンケートで評価が下位になってしまう「アメリカ銃の秘密」のせんだい探偵小説お茶会での評価は如何に?

「アメリカ銃の秘密」のアンケート結果は以下のようなものとなりました。

 

プロット サスペンス 解決 文章 論理性 感動・余韻
参加者 6 5 6 5 6
参加者 7 6 9 8 9 9
参加者 6 5 7 7 7 8
参加者 5 4 6 5 7 3
参加者 8 8 7 6 7 7
参加者 7 4 8 7 9 5
参加者 6 5 8 7 7 6
参加者 6 7 3 8 6 6
参加者 7 7 9 10 8 6
参加者 6 3 6 2 8 2
参加者 7 4 7 7 6 7
EQⅢ 7 9 9 8 9 5
ホスト 9 7 10 8 9 8
プロット サスペンス 解決 文章 論理性 感動・余韻
平均点 6.7 5.5 7.2 6.8 7.5 6

昨年は,「シャム双子の秘密」と「スペイン岬の秘密」の平均点を比較してみると,ほぼ同じぐらいの点数となりました。ただし厳密に計算をしますと(平均点を足して6で割ります),「シャム双子の秘密」の方が少し高い点数でありました。

「アメリカ銃の秘密」と「シャム双子の秘密」の平均点を比較してみると,0.3ポイント「シャム」が高い点数となりました。「スペイン岬の秘密」とは同じ点数となりました。

以下は,せんだい探偵小説お茶会での「スペイン岬の秘密」の点数となります。

 

プロット サスペンス 解決 文章 論理性 感動・余韻
平均点 6.4 5.9 7.6 6.3 7.3 6.2

 

ドラマチックな作風の「シャム」に軍配が上がり,パズル性の高い作品が同じ点数になったことに興味を持ちました。

パズル性よりも小説としての評価が「アメリカ銃の秘密」の評価が下位となってしまったのかもしれません。それでもパズル性が評価されている(個人的な考えです)「スペイン岬の秘密」と平均点が同じというところは,クイーンのミステリに対する実験精神のレベルの高さを物語っているように思えます。

本作品でも皆様がいろいろとお話をしていただき幸甚でありました。録音した音源を聴いてニヤニヤしている姿を妻が見て,気色悪そうな表情を見せていました。今回もホストは,皆様のミステリ愛,クイーン愛をひしひしと感じることができました。

読書会終了後には,他県からいらしたM氏とM氏,仙台市のT氏からの古本プレゼントじゃんけんで奪い合いコーナーが開かれ,参加者全員が(ホストが一番大人げなく)鼻息を荒くして参加しました。目玉が飛び出るような稀覯本から,同人誌,新刊文庫から絶版本をいただきました。この場も借りて三氏への御礼を申し上げます。

 

終幕

2019年中,もしくは2020年のはじめに報告できればよかったのですが,仕事が遅く,他のこともしなくてはならなくて大幅に遅れてしまい,アンケートにご協力いただいた方々に大変申し訳なく思っております。この場を借りてお詫び申し上げます。

その間にコロナウイルスの感染が広がり,読書会にも影響が出て,この先の見通しはまだつきないと思えます。はやく終息に向かい,読書会を心置きなくできることを祈念しております。

今回もクイーン作品を再読し,参加された方々の正直なお話を聞けて,本当に幸甚でありました!

エラリー・クイーンの作品の深淵はまたまだ何かがありそうです!!

次回のクイーン祭りは「ギリシャ棺の秘密」を予定しております。皆様どうぞお元気で!!!

 

 

スペシャルボーナス(ここからは,真相に触れております。未読の方はご注意を!)

 

飯城勇三氏からのアンケート回答

01.「アメリカ銃の秘密」を読んだ感想

初読の時は,「中盤は退屈,終盤は感心」だった。『ローマ帽子』もそうだが,「何かが“ない”ことを証明するための捜査」というのは,退屈きわまりない。しかも,『ローマ』は本当に“ない”のだが,『アメリカ』は「本当は“ある”のに,警察が一箇所だけ(正確には四十箇所か?)調べなかった場所があった」という真相なので,余計に捜査シーンが説明過剰になり,退屈になってしまう。

一方,バックとそっくりなスタントマンの存在が伏せられているのは,初読の時はアンフェアだと思った。ただし,再読時にはフェアだと考え直した。このあたりは,拙著『エラリー・クイーン論』に書いたので省略。

02.「アメリカ銃の秘密」を以下の点から評価してください。(各項目10点満点。10点の基準はこれまで読んで来たミステリ作品で,10点と思えるものと比較して点数をつけてください。)

プロット=7,サスペンス=7,解決=9,文章=8,パズル性(論理性)=9,感動・余韻=5

03.あなたがもっとも好きなキャラクターと場面と台詞

キャラクター=バック・ホーン。

理由=このトリックを実行すると,バックは家族も知人も過去の栄光も捨て,別人として一生を終えなければならない。そこまで覚悟して娘のために殺人を犯した意志を評価して。

場面=133p。ヴェリーがライオンズの銃を取り上げる場面。

理由=さらりと書いているが,銃を振り回す男を素手で制圧するなんて,すごいことではないかな。

台詞=80pのエラリーの台詞。「四十一人いるんだよ!」

理由=初読の時,ドキッとしたので。もちろん,萩尾望都の『11人いる!』は,まだ読んでいなかった。

04.「アメリカ銃の秘密」の美点

①入れ替わりトリックでは,顔がつぶされていたり,首が切断されているのが普通だが,本作は違う。誰もが被害者はバックだと信じているのに,エラリーだけが,ベルトの穴や拳銃から,“論理的に”別人であることを見抜く。そこがすばらしい。

②二万人の容疑者から犯人を四十人に絞り込み,そこから一人に絞り込む手際がすばらしい。

Q5 「アメリカ銃の秘密」の弱点

やはり,第二の殺人が不要。中だるみを防ぐという狙いはわかるのだが,第一の殺人だけで犯人を特定できるデータを揃えることはできるはず。ここをカットして中篇にすれば,文句なしの傑作だったのだが。

 

ホストのあれこれ

01.「アメリカ銃の秘密」を読んだ感想

今回で再読と再々読となりました。初読時は,舞台の派手さと犯人の意外性に驚愕して『もしかして傑作なんじゃないか!』と思っていましたが,周囲で『入れ替わりトリックや被害者の唐突さにアンフェア』と語られていることで,流されやすい私は本作品についてのファーストインプレッションを忘れてしまっていました。そして,今回の再読,再々読で感じたことは『アメリカのことを完全に忘れて侮っていた!』でした。どうして,こんな傑作のことを忘れていたのだろう。今,国名シリーズのアンケートに答えることになったら上位5作に入れるといっても過言ではありません。

QUEENDOM100号のアンケートで大山誠一郎氏は「バールストン・ギャンビット(人物入れ替わりトリックのことです)は本作で3度目となる。そのためか,このネタを見破る手掛かりは,本作がもっとも充実している。」と語り,瀬名秀明氏は「世間の評判もいまひとつなので今回油断していたら,結末の犯人像に一番驚かされました。」と語っています。私も同感であります!

「第一の奇跡。恐ろしい蹄がまわりをそこらじゅう踏みつけたのに,この男の顔に傷がない。」(101p)とエラリーが語っていて,入れ替わりは『アンフェア』と指摘される方がいるかと思われますが,前ページ(100p)には頭の片側半分が陥没したと地の文で書かれていることから,エラリーのセリフはエラリーの主観でしかありません。頭の片側半分が陥没しているのですから,顔面が少し歪んでいることを示唆していると思われます。そして,キットや他の登場人物が,生前のバック・ホーンに似ている代役(スタントマン)を勤めた被害者と入れ替わっていることに気付かず,バック・ホーンであると語る可能性は高いと思われます。(死者の顔を見ると生前とは違って見えることを含めて,似た人物が入れ替われる可能性は高いと思われます)

つまり,作者クイーンがエラリーのセリフでミスリードしただけで,アンフェアではない,と言えると私は思います。

私は,大山誠一郎氏が語っていたように,3度目のバールストン・ギャンビットで,そのトリックと手掛かり,ストーリー・テーリングのブラッシュアップをはかるクイーンのミステリに対する真摯な姿勢に感服しました。また,1933年のクイーン作品は「Z」「アメリカ」「レーン」「シャム」と私が偏愛する作品が目白押し発表年となっています。北村薫氏が挙げるクイーンの「天上の論理」の片鱗が著しく羽ばたいているように思えます。前年をクイーンの奇跡の年と言われていますが(間違っていたらすみません)1933年は「奇跡のセカンド・カミング」と言えるのではないでしょうか。

02.「アメリカ銃の秘密」の評価点

プロット=9,サスペンス=7,解決=10,文章=8,パズル性(論理性)=9,感動・余韻=8(終わり方に,読者への余白が多く見られる実験的な姿勢に)

03.あなたがもっとも好きなキャラクターと場面と台詞

キャラクター=エラリー・クイーン

理由=J・Jにバック・ホーンやキット・ホーンのことを思って,動機について詳細を語らなかった点に,やはりエラリーはいいね!と思いました。

場面=455p。エラリーがJ・Jに沈黙を守るシーン。

理由=エラリーはいいやつだねと思えたからです。

もうひとつおまけを。

場面=368p。エラリーが口笛で歌劇<ラクメ>の一節を吹きはじめたが,複雑な旋律だったため,しばらくそちらに注意を奪われた。と183pの悲しげな曲をハミングしながら室内を歩きまわるシーン。

理由=クイーン作品では曲名やアーティスト名が出てくることは少ないのて,つい確認してしまいます。それと,曲名が書かれていないと,とても気になってしまいます。

台詞=「(略)わかっている,だけどわからない。(略)」(248p)

理由=真相はつかんでいるけれど,といったところがとても意味深で好きです。そしてツインピークスの赤い部屋の住人が与える言葉の雰囲気にも似ているので。

他,キャラクターであればカービー少佐(236p・341p)シーンであれば,ラジオでエラリーが紹介されるところ(287p)。

04.「アメリカ銃の秘密」の美点

バールストン・ギャンビット入れ替わりトリックの新しいバリエーションの発明と事件解明への手掛かり提示(ベルトの穴,銃の握り,総稽古の服装,金庫の壊し方,馬のこと,凶器の隠し場所),意外な被害者の発明をした本作品は,後のミステリ発展に大きく影響を与えていると思います。『Z』を思わせる犯人の絞り込みも素晴らしいです。

Q5 「アメリカ銃の秘密」の弱点

グラントに泣きついて,映画に返り咲きたいと気持ちからこのショーが作られていったのに,バック・ホーンがなぜ代役をこっそりと殺害しなかったのかと理由を考えると。彼の殺害と自分の保険金,キットの守護者として彼女の幸せを見まもる位置につき,そして愛するカウボーイらしい暮らしから離れたくないことと,グラントへの恩返しからとかかんがえていたのかなともいえるのでしょうが,犯罪に利用するホーンの考え方に違和感を覚えます。グラントに泣きついた時点ではカムバックを望んでいたのに,その後,借金と脅迫から犯行に及んだということなのだと思いますが。グラントに泣きついた時点で計画していたのだとしたら,ライツヴィルものの片鱗が表れ始めていたのかもしれません。それをうまく表現できなかったことが弱点なのではと考えています。

また,野村芳太郎監督の映画「砂の器」のようなエピソードがされて人物を掘り下げて行ったら,面白くなりそうだなとも思いました。(エラリーも452pで動機や背景を同じように考えているようです。でも,犯人を知ってはいても433pのような理由で泳がせたのは,パズルを成立させるための弱点と思えます。)

それと,被害者がホーンだと思われていたけれど,エラリーがハリウッドから届けられた電報から代役の可能性を考えたのであれば,指紋を調べようとしなかったことも疑問に思うと思われます。他の作品でも同じような弱点があって,今回も同じようなので,これはクイーンがわざと指紋について避けていると思われます。

422pでホーンが二丁拳銃のうちの一丁しか渡さなかったのもパズルのためでしょう。

被害者をどのようにして引き寄せたのか(3000ドルは強請,そうでなければ代役依頼料)? まったく関係ないボクシングの試合(レッドへリング?)等,色々と瑕疵はありますが,それでも面白いのですから弱点はあってもよいと私は思うことにしています。(クイーンに関してだけです。)

その他

本作品を読んでいる時期にクエンティン・タランティーノの「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」を観て,暗合めいた奇妙な感覚にとらわれました。時代は違うのですが,映画の主人公たちとバック・ホーンと代役との比較をするのも面白いです。映画も超おすすめ作品です。(読書会の参加者の一人から同じようなお話が出てきました。まさにミステリの暗号!)

またまた,ツインピークスとの関連を発見!片腕の男,ファミリーネームのホーン(ちなみにベン・ホーンやオードリー・ホーン),ステットソン帽の保安官,私のお気に入りのセリフ,馬が出るなどがありました。監督のデヴィッド・リンチはクイーン作品に親しんでいたという仮説に本読書会でより近づいていることを確信しております。

 

(参考文献)

「エラリー・クイーン論」飯城勇三著(論創社)

「エラリー・クイーン推理の芸術」フランシス・M・ネヴィンズ著 飯城勇三訳(国書刊行会)

「EQFC会誌 Queendom」

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