せんだい探偵小説お茶会

Sendai Reading-Party of Mystery

40th report

第40回 せんだい探偵小説お茶会主催

エラリー・クイーン「シャム双子の秘密」&北村薫「ニッポン硬貨の謎」

読書会レポート

執筆者:クイーン・ファン

第一幕

せんだい探偵小説お茶会も6年目を迎え、今年もエラリー・クイーン祭りが無事開催されました。ホストのふがいなさで紆余曲折はありましたが、この場をお借りして、ご協力を賜った飯城勇三氏とご参加いただいた皆様に心より御礼申し上げます。

今回企画したのは、「シャム双子の秘密」(角川文庫 エラリー・クイーン著 訳 越前敏弥・北田絵里子)と「ニッポン硬貨の謎」(創元推理文庫 北村薫著)でした。

2冊というボリュームがあっても、14名の方に参加していただきました。(初参加は2名でした。それも関東から!)。

さて、本題に入って。前回の「スペイン岬の秘密」と同様に、エラリー・クイーンファンクラブ以外のミステリランキングに取り上げられたことはありませんが、直木賞作家の北村薫がパスティーシュを作るまでに至った魅力的な作品であることは間違いありません。

1983EQFC(エラリー・クイーンファンクラブ)国名シリーズ+1アンケート5位、1997EQFC全長編アンケート12位、2014EQFC国名シリーズ+2アンケート8位と、「スペイン岬の秘密」よりも、「シャム双子の秘密」は評価が高いと思われる作品であります。

今年も梅雨の時期でありましたが、昨年同様、夏日の暑さで厳しい中、せんだい探偵小説お茶会を迎えることとなりました。

参加者の感想は好意的なものか? それとも不満の声か? ホストとしては、どちらの考えも聞きたい! なぜなら、読者それぞれによる考えがあってこそ、作品のとらえ方が複雑になり、深まっていくと考えているのですから。それでは、はじまり、はじまり・・・・。

第二幕

毎回、クイーン読書会では、作品にちなんだお菓子が出てきます。ホストからは「シャム」ということで、タイのお菓子、エビチップスやマンゴープリン、ドライマンゴー、チョコレート菓子等を。差し入れでは、飴や団子をいただきました。本作品でも探偵が菓子を食べる姿が見られなかったので、ホストの菓子選びは、お茶を濁すようなセレクトになってしまいました。次回の読書会では探偵が菓子を食べている場面に出会えることを祈念したいと思います。

閑話休題。

さて、自己紹介を終えて読書会は本書の内容へと。参加者の「シャム双子の秘密」感想は以下のようなものでした。

「謎解きのために設定されて、謎解きをしたという印象。けっこうあっさり読めた」

「瀕死の〇〇〇に時間をかけて殺害する必要はなかったのではないか。推理も迷走していたためか、クイーン作品好きだと自覚していたのに、その気持ちが揺らぎはじめた…」

「おどろおどろしさがカーを意識しているのかと思った。冒険小説を読み終えたような感動を覚えた」

「好きな要素がてんこ盛りで、おいしい幕の内弁当を食べたような気分。山火事の中で殺人があり、その中でも殺人について考えようとすることに、人間の良心を感じた」

「サルトルの戯曲『アルトナの幽閉者』で『かに、かに、かに』と登場人物が叫んでいる場面を思い出した。推理小説として凄いと感じる部分はなかった。『ギリシャ』での失敗が活かされていないのでは。名探偵らしからぬ行動が多かった」

「火事なのに食べ物やガソリンに対する緊迫感が足りない。警視の罪悪感も足りないのでは。飛行機から助けられないという紙が落とされたのがショックだった。クローズドサークルの原型となった作品であることには感慨を覚えた」

「山火事なのに家に入って安心しているのが不思議。火事を忘れて過ごしているのが信じられない。ヨーデルでしらせあおうとしていたが、私にはできない。やっているところを見たかった」(創元推理文庫 井上勇訳では「ヨーデル」ではなく「大きな声」と訳されていました。越前先生、なぜヨーデルと訳したのでしょうか? お教えいただければ幸甚であります)

「いろいろな要素が盛り込まれすぎていて、山火事のことだけが残ってしまった。召使が車からガソリンを出していて、燃えるだろうと思った。山火事に対する行動が、大丈夫なの?」

「クローズドサークルに目がないので、私のベスト5に入る作品! 法月綸太郎作品に山火事の原因がSF的解釈で書かれていた。4章の引用はミスリードとわかった」

「翻訳ミステリシンジケート内で突っ込みどころの部分を読んでいて、読んでみたら山火事に対する突っ込みどころがたくさんあることが明らかになった。乱歩の『孤島の鬼』を連想した。警視が妻の指輪を盗まれて怒ったところがかわいかった」

「筋書きは評価できるが、エラリーが推理らしい推理はしていなかったのでは。『指輪を盗んだ人が犯人』という場面で真犯人をかばおうとする人がいて出ていったら、その人が犯人になってしまう。つまり、犯人は誰でもいいということになるのではないか。実際、エラリーが、犯人が逃げて行って『そのことは、もう忘れましょう。これからどうするか?』と言った場面が面白く思えた。そして、本当に犯人は誰でもよかったのだなと思った。自白してくれてよかったという終わり方と感じた」

「他の可能性はあり得ないという証明が、ないところに疑問を感じた。指輪を盗んだ犯人が殺人犯で山火事という異常な状況設定も『指輪』を真犯人に取らせて解決を導くことをすくうためだったのではないか。第二の被害者の死は、クイーン親子が責任追及で裁判にかけられるような状況だったのではないか。シャム双子を登場させたのは、トランプのダイイングメッセージのためだけに登場させたように思えた」

推理については、山火事のインパクトを超えられるようなロジックの煌めきが感じられず、ヨーデルと救出されそうで、されない場面での驚愕の方が記憶に残ったという感想が多いようでしたが、本作品の要素から、現代本格ミステリの傑作が生まれたとの感想も多かったように思われます。

第三幕

「シャム双子の秘密」について一度語り終えた時点で、予定時間の半分を過ぎてしまい、「ニッポン硬貨の謎」について感想発表をしていただきました。

「こちらの方が楽しく読めて、面白かった。引用文については成程と思った」

「注釈が多くて、読みづらく、中身があまり入ってこなかった」

「クイーンを読んでいないと楽しめないのでは。探偵小説の中の名探偵とはなんぞや?と考えさせられた」

「世間を騒がせている大事件と名探偵という設定が大好きなので楽しく読めた。後期クイーンを読むともっと楽しめる」

「いつもの北村作品とは違っている。海外から見た日本の書き方がよかった」

「クイーンが大好きで書いたのが、すごく伝わってきた。注釈の多さが訳者の顔が見えすぎる感じがした」

「私が自分の神様に会えるなら、仕事は全部休みます。解決の論理は幻想的すぎるかな」

「北村作品はアンソロジーを好んで読んでいます。海外の人が書いたものを日本人が訳した感じが出ていて大変上手なパスティーシュと思った。英語の俳句は三行詩であればいいので、その辺も上手いと思った」

「注釈からもクイーンに対する情熱を感じた。ベッキーさんシリーズが好きで、その流暢な文章との違いに驚いた」

「注釈には、疲れた。傍に書いてある脚注の方が好き。解決はこじつけ感が強いように思えて、少し理解できなかった。クイーンは好きだけれど、これは…」

「北村作品は結構好きで読んでいる。この作品は、強制的に自分を納得させた」

「『シャム双子』の新解釈が評価された作品だと思う。クイーンの登場人物の書き方の失敗もわかる作品。クイーン生誕100年に合わさった良い企画だったと思う」

「作者が一番楽しんでいる作品だが、それに同調できなかった。『シャム双子の秘密論』での『読者への挑戦』を入れると、それまでに出た解決がすべて偽りであることを宣言する。偽の手掛かりによる推理がたまたま真犯人を当ててしまったから『読者への挑戦』を入れなかったという考えには納得できない。正しい手掛かりと推理による解明がされればよいのだから、その状況が作られた時点で『読者への挑戦』を入れることができたのではないか。『シャム双子の秘密』は論理的な解決とはいえない結末だったから挑戦状は入れられなかったということなのではないか。第四章の引用文があるから『読者への挑戦』を入れなかったという考えにも納得ができない。小説とミステリを対比させているところがあって、北村氏はミステリよりの考えなのはわかるが、ミステリの純粋さを突き詰めたら、ゲームとかパズルでしかないとしたら共感はできない」

作者が楽しんで書いていることと、海外から見た日本の翻訳物として上手く表現されていること、クイーン作品を読み込んでいないと楽しめないのでは、との考えが多かったと思われます。また、『読者への挑戦』と引用文については慧眼なご意見をいただくことができました。

今回の読書会は、この時点で時間がいっぱいとなってしまいました。ホストの時間設定の甘さから「あなたがもっとも好きなキャラクターと場面と台詞は?」を参加者の方からお聞きすることはできませんでした。

ホストは、思いもよらなかった意見や考えを聞くことができ、読書会の良さを、またまた再度実感することができました。

第四幕

今回も参加者の方々にアンケートのご協力を13名の方にいただきました。ご協力ありがとうございました。(それぞれ10点満点です)

プロット サスペンス 解決 文章 論理性 感動・余韻
参加者 6 10 6 9 9 7
参加者 6 8 6 6 7 8
参加者 7 5 4 5 6 5
参加者 5 5 6 8 5 9
参加者 5 5 3 5 5 4
参加者 8 9 8 7 7 10
参加者 7 8 6 6 7 6
参加者 6 7 3 8 6 6
参加者 5 7 5 5 6 5
参加者 7 8 5 7 4 8
参加者 7 8 6 7 6 7
EQⅢ※ 10 9 8 8 9 10
ホスト 10 9 10 8 9 10

※飯城勇三氏のことです。

 

せんだい探偵小説お茶会アンケートの平均点

プロット サスペンス 解決 文章 論理性 感動・余韻
平均点 6.8 7.5 5.8 6.8 6.6 7.3

 

昨年の「スペイン岬の秘密」、せんだい探偵小説お茶会アンケートの平均点

プロット サスペンス 解決 文章 論理性 感動・余韻
平均点 6.4 5.9 7.6 6.3 7.3 6.2

 

「シャム双子の秘密」と「スペイン岬の秘密」の平均点を比較してみると、ほぼ同じぐらいの点数となりました。ただし厳密に計算をしますと(平均点を足して6で割ってみました)、「シャム双子の秘密」の方が少し上になっていました。皆様いろいろとお話をしていましたが、楽しんでくれたのかなとホストは思っております。

読書会終了後には、T氏からの古本プレゼントコーナーが開かれ、参加者全員が鼻息を荒くして参加し、素晴らしい古本をいただくことができました。T氏へ、この場も借りて御礼を申し上げたいと思います。

懇親会へ向かう際には、ホストが山火事の中のエラリーのように迷いながらも会場につくことができました。そこはアローヘッド館ではありませんでしたが、ビールとおいしいおつまみをいただきながら、「シャム」と「ニッポン」やミステリの話題が続き、楽しく時を過ごすことができました。

終幕

ホストのあれこれで語る前に、懇親会でも『読者への挑戦』について話題となりました。ホスト自身も『読者への挑戦』を入れることができたのではないかと考えていたので、「シャム双子の秘密論」以外の理由で入れなかったとしたら、読書会でご意見いただいた、論理的とはいえない解決の仕方だったからではないか、というお考えに傾きかけていました。ですが、なんとなく引っかかっているところがあったので、その後、まず再読してみようと思い、再読してみました。

読書会で、いろいろなご意見をいただきましたが、最後まで楽しく読了することができました。そして、「他の可能性はあり得ないという証明がされていない」というご意見をいただいていましたが、終盤の推理に突っ込みはいれず、山火事に襲われ、パニック状態の状況での推理をつぐむ手順に、またまた感心させられていました。

読了後、『読者への挑戦』が入らなかった理由に、新しい考えが二つ浮かんできました。

まず、一つ目は、ミステリとして反則なのかもしれませんが、探偵の失敗を予感させるため、山火事から助かるけど真犯人を特定できなかった。犯人が指摘できないミステリという、終幕にミスリードするためだったのではないかという考え。

二つ目は、「『読者への挑戦』を入れると、それまでに出た解決がすべて偽りであることを宣言する」と変わらないじゃないかと言われるかもしれませんが、『読者への挑戦』を入れないことで、読者に「これまでに語られた推理や自白の中に真相があるかもしれないよ」と、ヒントのようなものとして、そうしたのではないかという考えです。

もう一つは、読書会前に考えていたことで、最後のホストのつぶやきで、出てきますので、そちらを読んでいただければと思います。

読書会のおかげで、再読して、ここまで考える機会を得たことは幸甚でありました!

参加された方々の正直なお話を聞けて、本当に良かったです!! これだけ語り合えるエラリー・クイーンの作品は、ミステリの特異点だったと、改めて感じることができました。次回のクイーン祭りもお楽しみに!!!

スペシャルボーナス

飯城勇三氏からのアンケート回答

01.「シャム双子の秘密」を読んだ感想

初読時は、やはり、「山火事で全員に――犯人にも探偵にも――死が迫る」という設定に驚いた。

その後、ミステリ部分もよくできているのに気づいた。特に、ダイイング・メッセージを利用して犯人の意外性を高めている点がお見事。このあたりはクイーンFC会誌に書いたが、会員以外は角川文庫の新訳版『シャム双子の秘密』を読んでほしい。

02.「シャム双子の秘密」を以下の点から評価してください。(各項目10点満点。10点の基準はこれまで読んで来たミステリ作品で、10点と思えるものと比較して点数をつけてください。)

プロット=(10)、サスペンス=(9)、解決=(8)、文章=(8)、パズル性(論理性)=(9)、感動・余韻=(10)

03.あなたがもっとも好きなキャラクターと場面と台詞

キャラクター=(双子)。理由=その“けなげさ”に。前年のクイーン作品に登場する子供とはえらい違いだ。

場面=(角川新訳版304p)ページの(父親が死んだと勘違いしたエラリーの反応)。理由(親父が死んだと思った自分が泣いているのに驚くって……)。

台詞=(角川新訳版379p)ページの(「赦しを与えるは――神なり」)。理由(溝掘りで疲れ切ったエラリーが、水を与えてくれた双子に向かって言うセリフ。この時点では、エラリーは双子が殺人犯だと確信している。しかし、双子はもちろん、自分たちが犯人ではないことを知っている。それを頭に入れて読むと、何とも……)。

04.「ニッボン硬貨の謎」を読了後、本書「シャム双子の秘密」についてどう思いますか。

・興味あり

興味深かったので、

(1)EQFCの会誌で特集して、

(2)アメリカのF・M・ネヴィンズとE・D・ホックに「この(北村薫さんの)説をどう思うか?」と聞いてみた。ホックの回答は角川文庫の新訳版『シャム双子の秘密』に再掲。

ホストのあれこれ

01.「シャム双子の秘密」を読んだ感想

○今回の読書会に向けて6回目読了。前回の「スペイン」と同じ旅先の事件ではありますが、物語の起伏(ドラマティックな展開に翻弄されること)を感じるとともに、クローズドサークルで館ものであったため、「黒死館殺人事件」好きの私にとってはたまらない設定でありました。また、国名シリーズの中でも一番サスペンス色が強く感じられた作品であるとも思いました。

クイーンがミステリの先行作品をもとに色々な試みを行い、作品を作り上げていることは、よく語られています。本作品もヴァン・ダインの「カブト虫殺人事件」を意識して作られたのではと「ニッポン硬貨の謎」でも語られていて、私も同じように考えています。本作の魅力は、飯城勇三氏(以後、飯城さんで統一します)の解説で語られる「探偵の推理」と「犯人の計画」によるせめぎあいによって「意外な犯人」が示されることが本作の一番の魅力であることは、まさに、その通りだと思います。そして、「ニッポン硬貨の謎」で語られる「シャム双子論」(読者への挑戦の削除理由と描表具、円環法)も、魅力の骨子であると思います(「ニッポン硬貨の謎」を読むまで、挑戦と描表具に私は気づきませんでした)。ただ、円環法ではなく、「シャム双子の秘密」は、私が考えるミステリのジレンマに対する一つの解答なのではないだろうかと、初読時に漠然と考えていました。

現代ではタブレットが一つの解決方法になると思われますが、30年以上前の初読時には思いもしませんでした。その私の考えるミステリのジレンマとは、「書物という形はミステリにとって、真相は残りのページにあるもの」という考えでした。納得のいく推理や意外な推理が書かれていても、残りのページがまだあることを知ると、「まだ真相ではない」「どんでん返しがあるぞ」「サプライズがあるぞ」と思わされます。「シャム双子の秘密」は、私が考えるミステリのジレンマ、「書物という形はミステリにとって、真相は残りのページにあるもの」を解決する一方法を、新発明した作品であったのではないかと考えています。そして『読者への挑戦』を入れなかった理由の一つは、そのジレンマを解消するため、「もしかして、続きの本がでるかもよ」とミスリードするためだったのかもしれないとも考えられます。(これまでに、他の作品で語られていたら済みません。私の勉強不足です)。

推理については、「ニッポン硬貨の謎」の法月綸太郎氏の解説(P329)で『犯行動機と犯人を限定するための決め手は、あっけに取られるぐらい世俗的なもので、要するに、「地上の論理」と「天上の論理」が、ひとりの犯人の中に平然と同居する不思議な作品なのである。言い換えれば「意外な犯人」という効果に向けられたテクニカルな演出そのものが、「地上の論理」と「天上の論理」の接点になっている(略)』と語られていることは、短い文章ではありますが「シャム双子の秘密」を的確に表した言葉であると私は思います。「スペードの6」「ダイヤのJ」から展開される推理がまさに「地上の論理」と「天上の論理」で、そこに犯人の精神(犯人の計画)がねじれを生み出して、ジレンマを解決しながら意外な犯人を提示していったのだと思います。

「シャム双子の秘密」は国名シリーズの中で、題名とギミック(小道具の一つに「シャム双子」がそのまま出ている)、謎がマッチしている点で、国名シリーズの中でも特異な位置にあると思います。

解説で飯城さんが触れていた、もう一つの「探偵の死」とは、「探偵が死を意識した状況で如何に行動するか」という問いかけと私はとらえました。その回答が、本書のエラリーの姿であったと思います。その気高さは、エラリーが語るP409終わりの3行目からはじまる言葉に感じられました。そして「人間とは何者なのか?」、また考えさせられるものでもありました。

「黒死館殺人事件」(1935)との関連は、飯城さんが解説の中でも触れていました。他にも館に入って不気味な油彩画が飾ってあることや実験室の様子(動物のシャム双子の実験)、障害のある登場人物、探偵の推理の迷走から、小栗がクイーン作品を原書で読んでいた可能性は高かったと考えています(ヴァン・ダインは読んでいたことを作品の中で語ってはいます)。クイーンと小栗には奇妙で暗号のような結びつきがあるように私は妄想しています。ちなみに江戸川乱歩の「孤島の鬼」にもシャム双生児らしき人物が出てきますが、こちらは1925年に発表されています。

02.「ニッポン硬貨の謎」についての感想

読書会に向けて四回目の読了となりました。先にも述べましたが、初読時に「シャム双子論」を読んでシャムの仕掛けを知ることができました。クイーンの凄さと、その意図に気付いた北村薫氏の慧眼に感動しました。ただ、「天上の論理」については、こじつけめいているなと思いつつも、「五十円玉二十枚の謎」の解答の中でもスケールの大きさに作家はこれぐらい考えられる才能がないといけないんだと感心したのを覚えています。今回、再読をしていくうちに、こじつけめいているなと思っていたものが、「いや、これが正解なのでは」と思うようになり、「推理は意外なほど面白い! 思考がジャンプする快感!!」と思うようになっていきました。(小栗虫太郎の名探偵、法水麟太郎の推理は意外過ぎる推理で、天上の論理ととらえることもできます)

オグリものから小栗虫太郎作品について、ミステリが先人から連綿と受け継がれていく様、そして、後期エラリーの経験を、日本で如何に昇華させるかを提示した大団円。これらを愛情あふれる形で発表した本作は、直木賞作家、北村薫氏作品の白眉と言っても過言ではないと思います。

03.ホストの「シャム双子の秘密」の点数。

プロット=(10)、サスペンス=(9)、解決=(10)、文章=(8)、パズル性(論理性)=(9)、感動・余韻=(10)「ミステリで、死を意識する直前をミステリ(謎解き)で救おうとする物語と探偵の姿に」

04.ホストの「ニッポン硬貨の謎」を読了後、「シャム双子の秘密」についてどう思いますか?

もの凄く興味があります!!! 「シャム双子の秘密」に隠された意図を繙くため、そしてエラリーを愛するがゆえに、大団円を迎えさせる長編を書いてしまうなんて! 「愛、愛、愛。それこそが天才の神髄なんだ」とモーツァルトが語った言葉を思い出さずには、いられませんでした(尊貴な学位も想像力も、その両方を足したものを北村薫氏は持っているのだと思いますが、それ以上に愛があったということなのだと思います)

書いた北村薫氏も凄いのですが、それを書かせたクイーンは、もっと凄い!!! 何度も作品の中に出できた『神』!! やはり『神』なのでしょう。

05.あなたがもっとも好きな(印象深い)キャラクターと場面と台詞

キャラ:エラリー

P409終わり3行目からはじまる言葉がなければリチャード父さんでした。

場面=解決編はもちろんなのですが、当たり前な感じがするので、他の場面を述べたいと思います。

P55終わり7行目からP56、4行目の警視の目撃したものの説明をP81からP85で語られる場面。シャム双子を目撃して大きな蟹といった台詞は、初読時に鳥肌が立ち興奮したのを今でも覚えています。そして、再読の度にそのことを思い出してにやりとしてしまいます。

それともう一つ、P304~305のエラリーの父親に対する愛情を感じられる場面。涙を見せ、生きていると知って歓喜する場面も大好きです。

台詞=P53「殺人にはもってこいの場所だな。風さえもはまり役を演じている! あの妙なうなりを聞くといい。今夜はバンシーたちが総勢でおでましだ」

無神経な不安をあおるような台詞。後のミステリやホラーにどれだけの影響を与えたかはかりしれません。エラリーを嫌う方々の理由は、その無神経な発言か理由の一つなのでしょうが、私は、正直者だからととらえています。そんな正直なエラリーに好感が持てます。

○戯言

またまたデヴィッド・リンチねたであります。リンチがテレビドラマ「オン・ジ・エアー」(3話で放送打ち切り。4~7話まではビデオとLDでソフト化)の中で、「ハリーアップツインズ」というシャム双子役の二人の役者を登場させています。そして、昨年WOWOWで放送されたツイン・ピークスTheReturnでは、アローヘッド通りという住所がでてきました。(トロントに実際にある地名のようです。国営公園もあるようです。クイーン親子はカナダ帰りだったからアローヘッド館へ行ったのでしょうか?)

ツイン・ピークスでは、クイーンとの共通点が多く語られている中、他のドラマでもクイーンの影響を受けた様子が見られるということは、リンチはクイーン作品をかなり読んでいたのではないかと、またまた妄想してしまいます。アメリカのクイーンファンの方が訊いてくれないかしらと思うこの頃であります。

(参考文献)

「エラリー・クイーン論」飯城勇三著(論創社)
「エラリー・クイーンの騎士たち―横溝正史から新本格作家まで」飯城勇三著(論創社)
「エラリー・クイーン推理の芸術」フランシス・M・ネヴィンズ著 飯城勇三訳(国書刊行会)
「EQFC会誌 Queendom」


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